2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23360033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 卓 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30332729)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | フォトニック結晶 / シリコンカーバイド / ナノ共振器 / 二次高調波発生 |
Research Abstract |
本年度は(a)光通信帯域においてSiCフォトニック結晶共振器のQ値を1万程度まで増大させ、(b)実現したQ値のある程度高いSiCフォトニック結晶のハイパワー光に対する耐性を実証することに取り組んだ。 (a)昨年度確立したSiCナノ加工技術を用いて共振器と励起用導波路を備えた2次元フォトニック結晶スラブを作製した。その構造としては昨年度検討した導波路をベースとしたダブルヘテロ構造共振器を用い、動作波長が光通信帯域となるように各領域の格子定数を540nmおよび550nmとした。光学測定の結果、この構造において、中心波長1559nm、半値幅0.15nm程度の共振スペクトルが観測された。この結果は、Q値1万程度のSiC光ナノ共振器が実現できたことを示しており、これによりSiCにおいてもある程度の高Q値ナノ共振器が作製可能であることを実証できた。 (b)通常のSi光ナノ共振器においては、光通信波長帯域の強い光を入射した場合、高いQ値と小さいモード体積のために光電界強度が非常に大きくなり、2光子吸収過程とその生成キャリアによる自由キャリア吸収が生じてパワーが失われるとともに共鳴スペクトルに大きな歪みが発生する。これに対してバンドギャップが大きいSiCナノ共振器ではこれが生じないことが期待される。そこで実際に、同程度のQ値(1万程度)とモード体積を持つナノ共振器をSiとSiCで作製し、両者に対してパルス光を入射して応答を測定した。その結果、Siナノ共振器では僅か0.6pJの入力で出力の減少とスペクトルの歪みが生じ始めたのに対して、SiCナノ共振器では64pJと100倍以上のエネルギーを投入しても出力の減少や波形の歪みは全く見られなかった。(測定系の制限でこれ以上のエネルギーの実験はできなかった。)これにより、SiCナノ共振器が非常に高い入力パワーに対して線形に動作しうることを実証できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、Q値1万程度のSiCフォトニック結晶共振器の実現とそれをもちいた高強度入力光に対する安定性の実証を達成できたため。具体的にはQ値1万のヘテロ構造SiCフォトニック結晶共振器の作製に成功し、これを用いて光パルスに対する応答の測定を行った結果、Siの100倍以上の高強度入力光に対して非線形性を示さないことを実証できた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討により、光通信波長帯においてQ値1万程度のSiC光ナノ共振器の実現とその高強度入力光に対する安定性を実証したので、今後はさらに加工技術およびSiCOI基板品質の向上に注力して共振器Q値を向上させるとともに、SiCの大きなバンドギャップを活用して、可視光帯域で動作するフォトニック結晶の実現を目指す。
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