2012 Fiscal Year Annual Research Report
プラズモン応答関数を用いたフェムト秒レーザ励起プラズモン場の決定論的時空間制御
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23360036
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
神成 文彦 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (40204804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田邉 孝純 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (40393805)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 超高速光エレクトロニクス / 局在プラズモン / 表面プラズモン・ポラリトン / 時空間プラズモン制御 |
Research Abstract |
複雑なナノ構造の超高速局在プラズモン場は,個々のプラズモン共鳴および偏光特性のベクトル的重なりで決まるため,時空間特性計測法と励起レーザー制御を組み合わせた閉ループ型適応制御が1つのアプローチと考え得る。しかし,電子分極応答が線形過程である限り,局在プラズモン場の応答関数を取得できれば,励起レーザーの振幅・位相整形によって線形応答制御が可能になるはずである。この考え方に則り,閉ループ制御法ではなく,応答関数に基づいた決定論的制御の研究を行った。この手法を実現するためには,超高速プラズモン場の計測手法が鍵であり,以下の2手法を開発することに成功した。 (1)周波数干渉型走査型近接場顕微鏡 (2)相互相関型暗視野顕微鏡 この手法によりフェムト秒レーザーで励起した金ナノ構造の複素応答関数を計測した。さらに,励起レーザーと応答関数によって決定論的にプラズモン波形が決定されることを実験で確認した。例として,プラズモン場のピーク強度を最も高くなるフーリエ限界パルスにしたり,線形周波数チャープさせることができた。さらに,プラズモン場の2倍波は2光子励起場に対応することに着目し,応答関数とレーザー波形で決定論的に2光子励起場を制御することが可能であることを示した。これにより,ボータイ構造のような2倍波発生構造に対して,2光子励起を選択的に行えるようにプラズモン場を制御できることを明らかにした。 一方,局在プラズモン場制御をプラズモン導波路構造における表面プラズモン・ポラリトン(SPP)制御にも展開できることを実験から明らかにした。2本の金ロッドからなる導波路を作製し,異なる導波路端での応答関数を計測し,特定の方向にSPP伝搬が効率よく伝播するようにレーザ波形を整形した。このSPP伝播も線形応答関数制御が可能であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
金属ナノ構造のフェムト秒レーザ励起局在プラズモンの応答関数計測結果に基づいて励起レーザ波形を整形することで,決定論的にプラズモンパルスを制御することに成功した。この応答関数による決定論的制御は,実験系閉ループによって適応制御する手法よりも確実で精度が高く,局在プラズモン制御に適していることを実証できた。本手法を適用するに当たり,計測法として周波数干渉走査型近接場顕微計測および相互相関型暗視屋顕微計測法を順調に構築できたのも大きな一因である。 この局在プラズモン制御を,プラズモン導波路に適用する場合,表面プラズモン・ポラリトンを導波路に励起する点に於いて困難性を予想していたが,導波路端にレーザーを照射することで結合が達成でき応答関数を計測することに成功し,励起レーザ波形を整形することで,決定論的にプラズモンパルスを制御することができた。 この2項目の成功は本研究課題における当初の目標の80%に対応する。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる本年は,フェムト秒レーザ励起表面プラズモン・ポラリトン(SPP)用の回折格子結合型スーパレンズを作製し,高強度プラズモン場を発生できることを実証し,集光されたプラズモン場を計測する手法を開発する。これまでの我々のプラズモン励起は,回折限界程度の大きな領域を励起していたため,特定のナノ領域のプラズモン特性を確かに制御していたが,その周囲のプラズモン場は制御されずに存在していた。そこで,励起そのものをナノ空間に限定することが重要と考え,プラズモンスーパレンズの開発と特性評価に取り組む。この成果をもとに,ダブルプローブ型の近接場顕微鏡の構築に取り組み,従来にはないフェムト秒レーザ励起高強度プラズモン場をポンプパルスに用いたナノスケール,フェムト秒域でのポンプ-プローブ法の構築を行う。挑戦的テーマとして,スピン注入を可能とする制御された円偏光プラズモン場を集光することに取り組む。 一方,SPP伝播が導波路基板の誘電率によって変化することを利用し,相変化材料を取り込んだSPP導波路においてFANO共鳴効果を用いたスイッチ特性の実現をFDTDモデル計算から明らかにし,実際に相変化材料を基板材料とすることでSPP伝播がスイッチすることを実験的に確かめる。信号光のエンコーディングによるリコンフィギュラブルなナノ光回路機能と,この材料特性によるスイッチ機能を組み合わせることで可能となるSPPスイッチを提案する。 これらの成果をまとめ,学会および誌上論文発表を行う。
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Research Products
(7 results)