2011 Fiscal Year Annual Research Report
透過電子顕微鏡中共振圧縮疲労試験によるシリコンの疲労プロセスのその場観察
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23360054
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
神谷 庄司 名古屋工業大学, 大学院・工学研究科, 教授 (00204628)
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Keywords | シリコン / 疲労試験 / 透過電子顕微鏡 / その場観察 / 共振デバイス / MEMS |
Research Abstract |
シリコンは単結晶・多結晶を問わず疲労破壊する。MEMS構造の多くはシリコンで作製されており、その長期信頼性の確保には疲労寿命の定量評価が不可欠であるが、定量的モデル化の礎となるべき現象の物理を世界中の研究者が考えあぐねている。本研究は透過電子顕微鏡(TEM)のサンプルポルダに載せることのできる材料試験装置をMEMS技術で作製し、反応科学超高圧電子顕微鏡中でシリコンの疲労過程をナノレベルで連続的にその場観察することで、シリコンの疲労プロセスの詳細を解明することが最終目標である。本年度は、シリコンの結晶転位の観点から非常に重要と目される圧縮応力下での高速な共振試験を可能とする、超小型試験デバイスの基礎設計・開発を行った。今年度の成果を以下に述べる。 1)薄膜試験片および静電駆動方式の平行平板型MEMSアクチュエータを一体化した圧縮・引張試験デバイスについて基礎設計を行った。疲労試験するため、アクチュエータが高繰返し速度で共振駆動する構造とその駆動特性について検討した。また試験体への負荷応力を有限要素法により解析した。これらに基づいて厚さ2μmの試験片、16kHzで駆動する微小共振疲労試験デバイスを45mm角サイズで設計した。 2)貼り合わせ基板(SOI基板)から半導体シリコンマイクロマシニング技術を用いて共振デバイスを製作するべく、デバイスの製作方法および加工条件について試行錯誤を行い、上記設計の構造体を製作するプロセスを策定した。 3)試験デバイスの作製と並行してそれを動かすTEMホルダの開発を行った。荷重評価用ロードセル、平衡点シフト用ピエゾ素子アクチュエータ等の駆動装置一式を選定・納入し、これらをTEM内部に組込むための機構を設計・製作した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初原案のデバイスの仕様を一部変更(平衡点シフトフレームの改良)、デバイス製作に関わる外部機関の装置トラブルにより材料試験装置の開発がやや遅れている。またホルダ開発に関してもTEM内部に既存製品のピエゾ素子アクチュエータを適用できず特殊仕様が必要になるなど予期せぬ事態に見舞われた。現段階ではこれら問題は解決され、開発の技術的な目途はついており早急にキャッチアップしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
試験デバイスとホルダの開発を踏まえ、実験装置一式の組立て調整とデバイスの量産体制の確立を行い、具体的なデータ取得のための実験を開始する。差動排気を装備してなお顕微鏡中に大気圧環境下の高いガス分圧を実現することは困難であるため、微量のガスをホルダ内のラインから試験片に吐出し、装置に悪影響を及ぼすことなく環境ガスの影響機構を観察する一方、同一ホルダにより大気圧環境下での疲労試験を実行できる外部装置一式を作製し、大気圧下での疲労の進行状況を任意頻度で繰返し観察する二段構えの作戦を実行する。なお、疲労試験や観察を開始した際の状況に不具合があれば、試験片形状の再検討とデバイスのファインチューンを施す。
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