2012 Fiscal Year Annual Research Report
生体内埋め込み駆動・発電デバイスのための無鉛圧電材料多層膜構造体の創製技術開発
Project/Area Number |
23360059
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
仲町 英治 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (60099893)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
剣持 貴弘 同志社大学, 生命医科学部, 准教授 (10389009)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 分子材料設計 / 創製プロセス最適化 / 生体適合 / 発電デバイス / スパッタ成膜 |
Research Abstract |
本年度は,生体内埋め込み用駆動・発電デバイスに利用可能な生体適合圧電材料MgSiO3(MSOと略記)多層膜構造体の創製技術の開発を目指して研究を遂行し,以下に示す主要4課題において新たな知見を得た.(1)MSOの単結晶およびTi添加による混晶の構造体およびそれらの多結晶体のトリプルスケール解析を行い,誘電率・圧電特性評価を行った.混晶化および多結晶方位分布最適化による圧電特性向上を確認した.第一原理計算および均質化法結晶有限要素解析による本解析手法の有効性を確認し,機械学会において発表した.入力電力,基板温度,ポストアニール温度,ターゲット基板間距離に関するスパッタ成膜条件探索を行い,RFマグネトロンスパッタ成膜により,Ti25mol%添加MSOの圧電定数d33の理論値は334.1pm/V,実際に成膜した薄膜の計測結果は354.8pm/Vであった.(2)多層膜化の前にMSO(111)配向度の向上,表面粗さの極小化,圧電定数d33の向上を目的とする最適なポストアニール温度の探索を行った.最適ポストアニール温度676度,d33=129.0pm/Vを得た.(3)MSOユニモルフ型円形膜駆動デバイス(アクチュエータ)によるマイクロポンプの試作を行ったが,試薬の流動の高精度制御に関してはなお検討の余地があることが分かった.(4)本年度はユニモルフ型MSO発電デバイスの試作を行ったが,発生電力がμWと非常に小さいことから,ペースメーカーやDDSなどのBio-MEMSに使用可能な電力供給が可能になるように圧電ポリマーによる二重周波振動発電システムの開発に着手した.ANSYSによる振動発電システムの試作回路設計を行うことになる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目標遂行のために4課題を設定し,各課題における達成度を検討した.課題1は①当初の計画以上に進展している。第一原理計算によりTiの置換によるMgSiO3(MSO)混晶のRFマグネトロンスパッタによる薄膜創製に成功し,圧電定数d33=354.8pm/Vを得た.課題2は②おおむね順調に進展している。多層膜として10μm程度の膜厚を目標としているが,本年度は界面の制御を目指した成膜条件の検討を行った.課題3は②おおむね順調に進展している。MEMSにおけるマイクロ流路のためのマイクロポンプ創製を目指しており,今回はモノモルフ型カンチレバーによる振動発生を確認した.ポンプ創製の基礎は確立したが,設計と試作を続ける必要がある.課題4は①当初の計画以上に進展している。新たに採用した圧電ポリマーPVDFの採用により,ユニモルフ型二重周波振動発電システムを設計開発し,ペースメーカーの電源として使用することを目指して試作を開始した.
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Strategy for Future Research Activity |
研究の推進において問題は無く基本的な変更はない.以下に,4課題の推進方策について述べる.課題1では当初の計画通り第一原理計算と均質化法を組合せたマルチスケール解析によりMSO多層膜によるアクチュエータの設計を進める.加えて,圧電特性向上が期待できるTi添加によるMSO混晶のRFマグネトロンスパッタによる多層膜創製を進める.課題2は多層膜として10μm程度の膜厚を目標としていることから,RFスパッタによる高圧電特性実現のための多層膜創製条件探索を進めることになる.実験計画法および応答曲面法を用いた最適条件探索法を導入することで系統だった探索が可能になると考える.課題3は巨視的解析手法である有限要素法を最大限利用することでマイクロポンプ用薄膜アクチュエータの構造設計・機能予測が可能になり,実際の試作へと進むと考える.課題4は過大な場合に対応するために圧電ポリマーPVDFを用いた振動発電システムも検討中である.
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