Research Abstract |
本研究では,半導体,光学素子用"軟脆"結晶の形状精度と表面品位を両立した超精密加工技術及びその評価技術の開発を行なっている."軟脆"材料の結晶システムには,イオン結合,配位結合,水素結合など複数の異なる結合形態が同居している.単一共有結合あるいはイオンからなる硬脆材料と異なり,"軟+脆"の特徴を持つが,機械特性を系統的に研究されていなく、また加工特性に与える結晶構造の影響がまだ十分わかっていないのが現状である.したがって,本年度には,"軟脆"材料の物性及び除去メカニズムに及ぼす機械的(応力場)と化学的(反応場)な影響を実験的,理論的に明らかにすることを重点に,次の研究項目を取り組んだ. (1)"軟脆"から"硬脆"まで対応できる3種類の単結晶=LiTaO3(LT), Si, Sapphireを選んで,荷重が10mN~2000mNのマイクロインデンテーション実験を行った.延性材料を含む既知材料の機械特性(ヤング率E,硬さH,破壊靭性値K_<IC>)について比較検討した結果,延性材料と脆性材料の区分,さらに脆性材料については"軟脆""硬脆"を定量的に評価できる手法を確立した.また,上記3種類材料除去過程におけるクラック発生の臨界条件を明らかにした. (2)上記3種類の単結晶ウエハについて研削による除去実験を行った."軟脆"材料のLT, Siについては,き裂進展による破壊の形態および臨界条件を解明し,また"硬脆"材料のSapphireについては,材料除去の主体は砥粒の脱落によるラッピング効果であることを明らかにした.次年度に行う砥石の開発及び薄片化プロセスの指針を得た. (3)分子動力学(MD)シミュレーションにより,除去過程における個々のSi原子の挙動の解明,およびウエハ表層の加工変質層が仕上げ加工に及ぼす影響を調べた.その結果,除去時に排出される切りくずの挙動やSiのアモルファス変形挙動,加工変質層除去時の加工抵抗の低下などの現象が明らかになった.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度では,研究計画に沿って,加工・評価技術の確立を主目的に,次の3つの課題を取り組む. (1)昨年度のマイクロインデンテーションの実験では,10mNの荷重においてLTにクラックが発現した.そのため,10mN以下の押込み実験が必要になり,新規購入した装置で0.1mN~10mNのナノインデンテーションを行い,結晶構造の変化を解明する. (2)昨年度の研削実験で得た破壊臨界条件をクリアできる研削砥石の開発および加工条件の最適化を行う.同時にCMGの基礎実験および検討を開始する. (3)分光よるOn-machine厚さ計測技術を確立しつつであり,その原理を応用して点計測から面計測への発展を図る.
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