2012 Fiscal Year Annual Research Report
DLC薄膜の3次元ナノコーティングおよびプラズマ挙動解析
Project/Area Number |
23360072
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
崔 ジュン豪 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30392632)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 孝久 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60152716)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | DLC膜 / PBII / 3次元成膜 / プラズマシミュレーション / PIC-MCCM / トレンチパターン |
Research Abstract |
DLC(Diamond-Like Carbon)膜は、低摩擦性、耐摩耗性、離型性、耐食性に優れ、様々な機械部品の表面処理に使われている。一方、機械部品のほとんどは3次元形状を有しており、従来のDLC成膜技術では複雑3次元形状の部材への均一なDLC成膜は困難である。そこで本研究の目的は、マクロからナノスケールまでの3次元DLC成膜手法を確立するとともに、プラズマ計算により3次元空間におけるプラズマ挙動を明らかにすることである。本年度の研究実績を以下に述べる。 (1) DLC膜の3次元成膜: マクロトレンチパターン(5-10mmパターン、アスペクト比1-1.5)とマイクロ・ナノトレンチパターン(パターン幅200-2500nm、アスペクト比1-2)上にDLC膜を作成し、膜の均一性および膜質の評価を行った。数kVのパルス高電圧を印可することで、マクロ・マイクロ・ナノパターン共にイオンシース内での成膜条件になり、膜厚の均一性、膜質などは同じ傾向を示した。 (2) プラズマ計測: プラズマ計算では、プラズマ測定によるパラメータ設定が必須である。今年度はラングミュアプローブを用いて、様々なプラズマ生成条件においてのプラズマ計測を行った。得られたプラズマ密度、温度などはプラズマシミュレーションにフィードバックした。 (3) プラズマシミュレーション:PIC-MCC法(Particle-In-Cell法+Monte Carlo Collision法)を用いてマクロ・マイクロ・ナノ空間でのイオンの密度、エネルギー、 入射角およびポテンシャルの計算を行った。マイクロ・ナノスケール部材へのDLC成膜はイオンシース内においての成膜条件になり、与えた負のパルス高電圧の大きさにより3次元部材の側面に入射するイオンのエネルギー、フラックスが変化することからDLC膜の膜質および膜厚が変化することが新たに分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年から25年までの3年間の研究計画は、 ・まず、3次元DLC成膜に強みを持つバイポーラ型プラズマ利用イオン注入成膜法を用いてDLCを作成・評価することで、DLC膜の最適作成パラメータを探し出すことである。平成23年度の研究結果、正の高電圧パルス1.5kV、負の高電圧パルス2.5~5.0kVの作成パラメータでもっとも高い硬度を有するDLC膜の作成できた。 ・上記のDLC作成パラメータを用いて3次元形状物(本研究ではサンプルとして、トレンチパターンを用いた)にDLC膜の作成を行い、数mmスケールのマクロトレンチパターンからピッチ300nm~5umまでのマイクロ・ナノトレンチパターンに至るまでDLC膜の三次元コーティングを行い、ナノスケールの3次元部材にもDLC成膜が可能であることを明らかにした。またトレンチパターンの作製は東京大学のVDEC設備を用いて自ら行った。 ・3次元形状物に作成されたDLC膜の機械的特性の評価は従来の平面を対象にする方法では困難であるため、本研究では、マイクロラマン分光分析を用いてラマンパラメータとDLC膜の機械的特性の相関は整理することで3次元形状物に作成されたDLC膜の機械的特性の評価を可能にした。 ・マイクロ・ナノ空間ではプラズマの計測が不可能であるため、プラズマ計算手法を用いて、マイクロ・ナノトレンチパターン周囲のプラズマ挙動解析を行った。プラズマ計算のためのバルクプラズマの計測はラングミュアープローブを用いた。計算の結果、イオンシースの内部にパターンが存在するため、トレンチ側面に入射するイオンの密度、エネルギーは平面サンプルに比べて小さくなることが新たにわかった。その結果、側面に成膜DLC膜の膜厚は平面に比べて小さくなること、DLC膜質はポリマー化する傾向があることが新たにわかった。 以上から本研究は計画とおり順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画、推進方策は以下の通りである。 ・三次元DLCコーティング膜の膜質改善:バイポーラPBII法を用いてトレンチ形状物へのDLC膜の三次元コーティングを行いその膜特性を評価した結果、側面におけるDLC膜の膜厚および硬さはトレンチの上面と底面に比べて減少することが分かった(DLC膜のポリマー化)。今後は、側面に成膜されたDLC膜の膜質を改善するための研究を行う予定である。側面における膜質や成膜率の低下は、プラズマの計算結果、側面の形に添ったイオンシースが形成されないため、側面に入射するイオンのフラックス、エネルギーが小さくなるためであった。その解決策として、負の高電圧パルス値の最適化を行い、入射イオンエネルギーの向上を試みる。また、原料ガスである炭化水素ガスに成膜には寄与しない不活性ガス(アルゴンガス)を添加することで、側面でのイオンアシスト効果を高めることで側面においての膜質の改善を図る。 ・マイクロ・ナノ空間におけるプラズマ挙動の解析:現在まで、プラズマ計算にはアルゴンガスを用いて行ってきた。与えた電界により、イオンの挙動を追跡するためにはアルゴンイオンを用いた解析で十分であった。今後、炭化水素系ガスに不活性ガス(アルゴン)を混合させてトレンチパターンの側面に作成されるDLC膜の膜質を改善するための研究を行う予定であるため、プラズマ計算においても、炭化水素系ガスとアルゴンガスを混合した条件でのプラズマ挙動を計算する必要がある。そのため、まず、メタンまたはアセチレンガスをイオン種としてプラズマ計算を行った後、一定の割合でアルゴンイオンを混合させながらトレンチ側面に入射するイオンの挙動を計算していく予定である。
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Research Products
(13 results)