2011 Fiscal Year Annual Research Report
浮遊液滴の非線形ダイナミクスを用いた高機能無容器プロセッシングに関する研究
Project/Area Number |
23360081
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
阿部 豊 筑波大学, システム情報系, 教授 (10241720)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 聡 宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 主任研究員 (90360718)
渡辺 正 日本原子力研究開発機構, システム科学研究センター, 研究主席 (50391355)
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Keywords | 液滴浮遊 / 宇宙環境利用 / 非線形 / ダイナミクス / 無容器プロセッシング |
Research Abstract |
現在、浮遊技術の利用により高温溶融物を容器と非接触で保持することができる。これにより、融点が2000℃を超える高融点の液体金属の熱物性値測定が可能となる。また、均質で高品質な新材料を製造することができる。分析化学の分野においても、濃縮・分離・抽出・誘導体化に浮遊技術が用いられ始めている。これらの浮遊技術の利用においては、浮遊状態にある液滴の挙動は全て定常かつ線形であることを前提としている。しかしながら、過去の研究において、静電場や超音波を利用する浮遊技術においては、液滴界面の大変形や、液滴内外の流動など、非線形な流動挙動が発現することが観測されている。浮遊技術を用いた新たな高機能流体プロセス技術を実現するためには、このような非線形挙動を流体力学的知見から明らかにすることが必要不可欠となっているものの、実験ならびに解析の両面からの科学的知見はほぼ無いのが現状である。 本研究では、静電浮遊装置でクーロン力を与えて浮遊させた液滴の振動や回転などの界面変形挙動の観測と、それらを用いた熱物性値測定を行うとともに、超音波浮遊装置によって空気中に浮遊させた液滴の界面変形と内部・外部流動の可視観測を行うこととしている。更に、これらの実験と同時に、浮遊液滴の非線形を含む界面変形を取り扱うための理論構築し、浮遊液滴界面の非線形挙動や内部・外部での流動を再現するための多次元で非定常の数値解析手法を用いた解析を行うものである。 本年度行った超音波浮遊実験ならびに静電浮遊実験の結果、浮遊技術を用いた高機能流体プロセス技術の実現のために必要となる、浮遊状態にある液滴に発生する非線形挙動についての実験的知見を取得した。また、その現象を記述する非線形理論、更には非線形で非定常な変動界面を有する現象を予測評価するための多次非定常の数値解析手法の構築を行った。得られた知見に基づき、これまで精度的に不十分とされている浮遊技術を用いた高温溶融物の粘性係数測定法について、新たな手法を提案することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
静電浮遊技術ならびに超音波浮遊技術を用いて、液滴浮遊実験を実施するとともに、新しい非線形理論の構築と数値解析を行ってきた。静電浮遊技術を用いた実験においては、浮遊液滴の回転分裂の粘性依存性を利用することで、これまで不可能であった範囲の粘性係数について、新たな測定法を提案した。また、超音波浮遊技術を用いた実験においては、浮遊液滴の界面変形を伴う内外の流動挙動の非線形ダイナミクスが、ストークス層のような液滴表面での微細構造に起因する可能性を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で開発した粘性係数測定手法には、いまだ測定精度に相当の誤差が認められている。手法の確立のためには、今後、粘性流体の非線形な分裂挙動を実験的により詳細に捉えるとともに、その実験情報をもとに浮遊液滴の非線形挙動を、理論・数値記述する手法を開発することが求められる。更に、実験的にStokes層の状態を把握することが必要である。ストークス層の厚さが数マイクロンと極めて薄いものと推定されることから、浮遊液滴界面を通した内外部流動の相関について実験を行って浮遊液滴の非線形挙動を明らかにしてゆく。
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Research Products
(12 results)