2012 Fiscal Year Annual Research Report
高温高圧環境下における異性体バイオ燃料の乱流燃焼メカニズムの解明
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23360090
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小林 秀昭 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (30170343)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 高圧燃焼 / 乱流燃焼 / バイオ燃料 / 異性体 / 化学反応機構 |
Research Abstract |
本研究は,高温高圧環境下における異性体バイオ燃料の予混合乱流燃焼メカニズムを明らかにし,高圧反応動力学と乱流との相互作用に基づく極限環境乱流燃焼の学理構築を図ると共に,多様なバイオ燃料燃焼システムの設計と制御に対する燃焼学的根拠に基づく指針を提示することを目的とする. 平成24年度は,昨年度製作した,液体燃料を高圧燃焼容器内で蒸発させ空気と混合させる蒸発混合装置および矩形乱流燃焼バーナにより,0.5 MPaまでの高圧乱流燃焼実験を行い,OH-PLIF画像から火炎面密度,乱流燃焼速度の乱れ強さ,火炎凹凸の最小スケールの圧力依存性を求めた.昨年度予備実験から見出された火炎の特徴,すなわち 2-プロパノール火炎は,1-プロパノールおよびメタン火炎に比較して乱流火炎領域の凹凸の微細化が顕著であることが,局所火炎面密度の数値として確認された.矩形バーナは出口面積の制約から境界層の影響が無視できないため,実績ある出口径20 mmの円形ノズルバーナを用いて検証実験を行うとともに,ルイス数がプロパノールに近いプロパンに対する乱流燃焼実験も実施した.その結果,2-プロパノール火炎の局所火炎面密度が最も大きいことが確認され,矩形バーナによる実験結果の妥当性が示された. このような乱流火炎構造の違いが生じるメカニズムとして,異性体間の熱分解反応過程の違いにより主反応帯上流の中間化学種と濃度に差異が生じ,熱・物質拡散相互作用による局所火炎の固有不安定性への影響が現れているのではないかという仮説を立てた.さらに数値解析により,ルイス数が1より大きく発熱量の大きい化学種の濃度が大きいほど固有不安定性が抑制されること,1-プロパノールは2-プロパノールに比較してC2化学種濃度が大きいことが明らかになり,乱流火炎の微細化傾向と一致し,異性体燃料の乱流火炎構造への影響の一端が明確になった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していたプロパンに対する高圧乱流燃焼実験を実施し,OH-PLIF画像の解析によって,プロパノール異性体の乱流火炎構造の違いを数値的に表すことができた.本研究の大きな目的である乱流火炎構造への異性体効果について,熱分解過程の違いに起因する熱・物質拡散相互作用に関する仮説を提案し,熱分解過程で生じ乱流火炎特性に支配的な影響を及ぼす中間化学種であるC2, C3化学種の同定が数値解析によって進んだことは特に大きな成果であった.ラジカルに対するPLIFとPIV同時計測など更なる分光学的計測については,高圧容器内での光学系調整と分子散乱光強度低下に対する対策を立てる必要があることが判明し,引き続き調整を行うことした.以上より,本研究は概ね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
円形ノズルバーナを用い,1-プロパノール,2-プロパノール,ならびに異性体がない炭素数3のプロパンに対する高圧乱流燃焼実験を昨年度より広範な乱れ強さと当量比条件に対して拡張して行い,乱流火炎特性に対する異性体効果を明確にする実験を進める. 高圧容器内での光学系調整と分子散乱光強度低下への対策検討を進め,その結果に基づき,局所火炎の乱流への応答と乱流火炎領域の微細化との関係を明らかにする実験を試みる. 実用燃焼への展開として本研究の目的の一つである,燃焼排出ガス特性に対する異性体効果を明らかにする実験を行う.アルコール系バイオ燃料は,含酸素燃料であるためCO排出が抑制されると予想される.アルカン燃料であるプロパン火炎と比較しながらNOxおよびCO排出への雰囲気圧力の影響を実験的に調べる.また,一次元火炎およびフローリアクターモデルに対する詳細反応数値解析も行い,燃焼器内滞在時間との関係を明らかにし,バイオ燃料を用いた高圧燃焼機器の設計指針とする. 昨年度の数値解析から,異性体によって異なる中間化学種濃度が火炎の固有不安定性,ひいては乱流火炎構造に影響をおよぼすことが明らかになり,高圧乱流燃焼実験による火炎の特徴を説明することができた.熱分解反応による中間化学種が熱・物質拡散相互作用に影響を及ぼしていると解釈され,その仮説を提案したが,さらに確認を行うため,熱・物質拡散相互作用が強く表れる対向流予混合火炎に対しても同様の反応モデルを用いた数値計算を実施する.これらの結果から,熱分解過程が異なるアルコール系バイオ燃料の高圧乱流燃焼メカニズムを明らかにする.
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Research Products
(8 results)