2012 Fiscal Year Annual Research Report
大規模詳細反応機構の革新的簡略化法の開発と燃焼シミュレーションへの応用
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23360095
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
越 光男 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20133085)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺島 洋史(石原洋史) 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20415235)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 詳細反応機構 / 炭化水素燃料 / 簡略化 / 数値流体計算 / エンジン燃焼 / エントロピー最大化法 |
Research Abstract |
本研究の目的は超大規模詳細反応機構に基づいた数値流体シミュレーションを実現するための革新的アルゴリズムを確立することにある。前年度に、このためのアルゴリズムとして2段階の詳細反応機構の簡略化を行うことを提案した。すなわち (1)化学種数千程度の超大規模詳細反応機構をDRG(Directed Relation Graph)法により化学種数百程度の中規模詳細反応機構に簡略化する。 (2)中規模詳細反応機構をエントロピー最大化法に基づく簡略化法(Rate Controlled Constrained Equilibrium:RCCE法)により化学種数十程度まで簡略化し、これを数値流体計算プログラムに組み込む。 この方針に基づいてノルマルアルカンの詳細反応機構をDRGにより簡略化し、圧力一定、断熱条件下でのRCCE法プログラムを開発した。今年度は圧縮性流体計算に反応を組み込む際に必要となる体積(密度)一定、断熱の場合のRCCE法アルゴリズムを構築し、プログラムを開発した。また、実用燃料のエンジン燃焼シミュレーションを行うために、イソアルカンを含むガソリン燃料の標準燃料(PRF)の反応機構について本アルゴリズムを適用した。 開発した体積(密度)一定のRCCE法を流体ー反応時間分離法に基づいて流体計算に詳細反応を組み込むことを試みたが、この過程で密度一定のRCCE法においては束縛条件の微分方程式が極端に剛直性が高くなる場合があるという問題点が明らかとなった。この剛直性の高い微分方程式の高効率数値解法の開発が今後の課題となる。一方、中規模詳細反応機構を圧縮性流体計算に組み込むための方法論として、陽解法に基づくMTS(MultiTimeScale)法のプログラムを開発した。これを用いてエンドガスの自着火シミュレーションが効率よく行えることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標はCFDに組み込むための簡略化法アルゴリズムの開発とその実証であったが、圧縮性流体計算に組み込むための体積(密度)一定、断熱条件下でのRCCE法アルゴリズムの構築とプログラム開発は終了した。ただし、束縛条件に対する微分方程式が極めて剛直性が高く、数値積分に時間がかかってしまうという新たな問題点が見つかり、この問題点は未だ未解決である。 一方、化学反応による生成項の直接積分法として従来の方法よりもはるかに高速なMTS (Multi-Time Scale)法を開発し、CFDコードに組み込み、この方法を用いて体積一定の場合のノッキング現象(End gasの自着火現象)のシミュレーションが可能であることを示した。この成果は当初の計画には無かった新たな成果である。 この結果、化学反応による生成項については直接積分法を用い、移流と輸送項(拡散、熱伝導)についてのみRCCE法を用いるなどの新しい方法が可能となった。 計画はほぼ予定とおりに進行しているとしてよい。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は最終年度であることから、目標は超大規模詳細反応機構を数値流体計算とカップルさせて解く方法論を構築してその実証を行うこととなる。この目標を達成するために以下の項目を失しする。 1)流体計算に組み込むためのRCCE法を完成させる。これまでの研究で、体積一定のRCCE法においては、束縛条件の時間発展を記述するための微分方程式が極めて剛直性が高くなることが明らかとなった。この問題の解決法として、剛直性の高いJacobian行列を優対角行列になるように変換する前処理を行うことが有効と思われる。したがって本年度はこの前処理行列を見出して、高速なRCCE法を開発することが第一の課題となる。 2)反応方程式と流体計算をカップルさせる方法として、本研究ではTimeSplitting法を採用する。この方法における反応方程式の時間積分にRCCE法を適用することにより、積分する変数の数が数千(化学種の数)から数十(束縛条件の数)に劇的に現象する。一方で、流体計算における拡散項の計算は化学種の数の二乗で計算時間が増加する。したがって流体方程式における変数の簡略化も必要とされる。本年度の重要な課題は流体計算における変数の簡略化法を構築することにある。RCCE法で用いた束縛条件に対する輸送方程式を導き、これを解く方法を開発する。 3)RCCE法における剛直性の問題が解決できなかった場合を想定し、反応方程式の高速直接積分法を開発する。流体計算とのカップリングを前提にした場合、陰解法は適用できないので、前年度開発したMTS法のさらなる高速化、およびCHEM-EQ2法などの陽解法について検討する。 4)超大規模反応方程式の数値流体計算への組み込みの例として、体積一定の系での炭化水素燃料の火炎伝播の計算を行う。この系における火炎前方の自着火(エンジンノックと同じ現象)をシミュレートできることを実証する。
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Research Products
(3 results)