2011 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外温度イメージング法によるマイクロ化学チップ内の発熱反応測定
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23360102
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
角田 直人 九州大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (70345437)
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Keywords | 温度イメージング / 近赤外分光 / マイクロ化学チップ / 発熱反応 |
Research Abstract |
近赤外分光法に基づくマイクロ流路内の水溶液の温度イメージングシステムの開発と応用に取り組んだ。具体的には以下の項目について成果を得た。(1)波長1412nmと1905nmにおける吸光度の温度感度、近赤外カメラ性能、および溶液厚さをパラメータとして温度測定精度と測定限界を計算した。(2)石英セル内の水の温度画像を取得し、以下の条件の温度係数(吸光度と温度の比)を算出した。温度16~42℃で2℃刻み、厚さ25,50,100μm。このとき、実現象の情報損失がないようにスムージング次数(空間・時間)を決定し、ランダムノイズを低減させた。(3)流路深さが50μmのY字型マイクロ流体チップを局所加熱した場合の温度イメージングを実施した。加熱部からの熱伝導によって溶液温度が上昇する過程を世界で初めて画像化した。温度分解能は0.2Kと見積もられた。温度分布は流れの影響を受けることも確認した。尚、イメージングと併せて、2台の分光器による2点同時スペクトル測定を行い、流路内の透過スペクトルが温度を反映していることを確認した。(4)液内部に微小な発熱体がある場合の断面温度分布を、近赤外温度イメージング法の結果にAbel逆変換を適用することで得られることを示した。吸光度プロファイルの近似はガウス関数和を用いることで解析的なAbel逆変換が可能となった。(5)近赤外カメラと狭帯透過フィルタを組み合わせた温度水分量同時イメージング装置を開発し、その有効性を検証した。温度測定波長(1412nm)と非温度依存性の等吸収波長(1440nm)の狭帯バンドパスフィルタに対して、オプティカルチョッパによって交互に光照射し、試料への入射光とする光学システムである。十分な透過光強度で両波長の明瞭な画像が得られることを確認し、温度と水分量に対する差異を検出することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に掲げていた、(1)温度イメージングシステムの開発、(2)較正実験による測定精度の調査、(3)局所加熱による温度分布形成とイメージングのすべてについて、計画通り実施し成果を得ることができた。特に、システム開発では、温度補正のための水分量の同時測定システムの開発に発展させることができた。実施できなかった課題を挙げるとすれば、流路内反応実験があるが、測定系の準備は完了しているため、次年度初めには実施できる。
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Strategy for Future Research Activity |
測定システムの開発がほぼ完了したので、今後はスペクトルと画像の取得と解析に取り組むが、これには時間を要するため、研究補助者や学生の数を増やし、効率的に推進したい。また、光学系の調整と画像処理は連携研究者の協力を得ているが、画像用のサーバーを設置してさらに連携をとる計画である。
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Research Products
(8 results)