Research Abstract |
大型の超伝導コイルでは,多数本の細い超伝導線を撚り合せて圧縮し,コンジットの中に挿入した構成のケーブル・イン・コンジット(CIC)導体を用いるが,高磁界下で運転すると,予期しない超伝導特性の劣化が発生する場合がある。これらの原因究明のためには,CIC導体内各素線の3次元位置の情報を詳細に把握する必要がある。CIC導体を約1cm幅に切断して,各素線の3次元位置を計測する装置を開発して測定した結果,多数本の超伝導素線が導体製作時に圧縮を受けて,予期していた所定の位置から大きく変位するために発生することが分かった。導体を構成する製造パラメータである素線径,素線占有率,各サブケーブル次数の撚りピッチ,導体の断面形状などに注目して,圧縮変形を反映できる断面内の素線位置を解析する等面積法を提案した。この解析結果と3次元実測結果と比較した結果,素線がケーブルの表面に現れる平均の長さや,表面に出てこない素線数などのパラメータは比較的良く一致した。 しかし,等面積法では,素線同士が重なりある場合があるので,素線間の機械的エネルギーを評価して全素線の総エネルギーが最小となるように素線に微小な摂動を加えて素線配置の最適化を行った。その結果,素線の重なりを解消すると同時に,素線が表面に出現する平均長さやその標準偏差を実測値と一層合致することを確かめた。 実際の導体間の接続を考えると,全ての素線がケーブル表面に現れて同程度の長さで接触すると,接続部での直流電流の分布が等しくなるはずであるから,導体の製造パラメータである各サブケーブルの撚りピッチを変化させてパラメータサーベイを行った。その結果,計測したCIC導体では約13%の素線が表面に現れなかったが,全ての素線が表面に現れるピッチを見つけることができた。また同時に,標準偏差も少なくでき,接続部での一様電流分布の可能性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初期に予定していた3次元素線位置測定の技術は確立できた。この結果を用いて,接続部の直流特性を調べた結果,ケーブル表面に現れない素線の割合が13%もあることが分かった。さらに,等面積法を用いるとこれらの結果を予想することができた。また,機械エネルギーを導入すると,素線同士の重なりがなくなり,現実に近い素線配置になると同時に,一層の素線位置の推定が可能となった。これらは世界で初めての結果であり,国際超電導会議では多くの研究者から注目を浴びた。
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Strategy for Future Research Activity |
多数本の素線位置を3次元で推定できる可能性の高いことが分かったので,位置推定の基準となる指標を定め,それらの評価を行うことで統計推定を評価する必要がある。これまでの結果から,素線がケーブルの表面に現れる素線数や長さの指標では統計的に一致することを確かめたので,今後は,実際のCIC導体を分解して表面に現れる素線数や長さを実験で実証する計画である。さらに,他のCIC導体についても同様な指標について調べて,推定技術の確立を図る。さらに,素線間の機械エネルギーを最小とするための計算時間は極めて長いので,遺伝的アルゴリズムを導入するなどして計算時間の短縮を図る計画である。
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