2012 Fiscal Year Annual Research Report
シリコン上の強磁性体/半導体ナノワイヤによるスピン偏極発光素子の研究
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23360129
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
原 真二郎 北海道大学, 量子集積エレクトロニクス研究センター, 准教授 (50374616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本久 順一 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (60212263)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 半導体ナノワイヤ / 強磁性体ナノ構造 / 選択成長 / スピン偏極発光素子 / ボトムアップ形成 / 複合ナノ構造 / 半導体ナノテクノロジ / スピントロニクス |
Research Abstract |
本研究は独自の作製技術を駆使し、(1)化合物半導体ナノワイヤ(NW)に強磁性体ナノクラスタ(NC)を複合した強磁性体・半導体ヘテロ接合NWによるナノスピン発光素子を提案し、(2)Si(111)ウェハ上で位置・サイズ制御可能な全く新しいビルドアップ型作製技術の確立を目的とする。本年度は(a)強磁性体・半導体複合NWの改良・作製、(b)複合NWの物性・構造評価を中心に研究を推進した。 二端子のプロトタイプ素子として作製したMnAs-NC/GaAs-NWに対して、海外研究協力先との連携により磁気抵抗効果を評価したが、数10MΩの高抵抗で良好な特性を得るに至っていない。本年度は素子構造の改良を行い、InAs-NW上のNC複合構造の作製を実施した。従来のGaAs-NW上のNC形成による構造と異なり、六角柱NWの側面(稜線)と同時にNW上面、つまりInAs(111)B面上にも、比較的均一性良くNCが形成されるとの知見を得た。詳細な結晶構造評価の結果、確認された全ての構造で、InAs-NW側面のMnAs-NCのc軸はNWの<111>B方向と直交、NW上面のNCのc軸は<111>B方向と平行であることを確認した。GaAs-NW上では側面に形成されたNCのc軸は比較的ランダムに傾斜していたため、InAs-NW導入による低抵抗化と共に、より顕著な磁気抵抗効果を期待できる。電気的特性評価用サンプルの作製を引き続き実施中であり、海外研究協力先と特性評価を計画中である。さらに昨年度の選択形成実験の参考実験として、プレーナSi(111)ウェハ上にAl2O3絶縁体薄膜を堆積した構造をウェハに用いて行った結晶成長実験では、ランダムではあるが、やはりAl2O3膜厚5nmのサンプルで六角柱AlGaAs-NWの形成を確認している。詳細な結晶構造評価と共に、Al2O3薄膜表面処理と選択形成の再検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度先送りした複合構造の断面構造観察・結晶構造解析・固相組成分析を予定通り今年度実施した。また昨年度作製した電気測定用サンプル素子を用いて海外研究協力先と磁気抵抗測定を行った結果、素子が高抵抗のため良好な磁気抵抗効果を確認するに至っていない。そのため現在素子を構成する複合構造の改良を推進すると共に、確立したデバイスプロセス技術により並行して電気特性評価用サンプル素子を再び試作している最中である。当初計画の素子に対しては若干の遅れを生じ始めているものの、明らかになった課題を解決する新たなアイディアにより、改善したサンプル素子の試作も推進しており、現時点では概ね順調に進展していると考えている。ただ、サンプル素子の試作の過程で、複合構造やヘテロ接合ナノワイヤに用いる材料系・積層構造の再検討、確立したデバイスプロセス技術の改善・最適化等の必要性も生じてきており、これらも合わせて効率的に実験を推進する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度着想を得たナノワイヤ磁気センサー構造の作製の過程で、半導体ナノワイヤ上における強磁性体ナノ構造の形成位置は、母体となるナノワイヤの材料系に依存することを見出している。(i)新たなナノワイヤ磁気センサー応用、(ii)ナノスピン発光素子に向けた複合構造およびヘテロ接合ナノワイヤ構造の最適化を行うと共に、透過型電子顕微鏡による詳細な結晶構造評価および、改良した複合構造の磁気抵抗特性評価を引き続き並行して実施し、プロトタイプ素子の試作を目指す。これまで同様、本研究では海外研究協力者との連携も極めて重要であるため、主に磁気抵抗特性評価の面で今後も引き続き推進する。これまでの構造では、高抵抗のため、磁気抵抗特性に関しては良好な特性を得るに至っておらず、今後も場合によっては、さらなる構造の改善を図る。また、ナノワイヤ材料としてInAsを用いることにより、ナノワイヤ上面、つまりInAs(111)B面上に結晶軸の揃ったMnAsを積層させるこに成功しているため、この知見を元に、MnAsから量子ドットを内包するヘテロ接合ナノワイヤへのスピン偏極キャリアの注入を目指す。
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