2012 Fiscal Year Annual Research Report
次世代高性能ディスプレイの実現に向けた低温多結晶シリコン薄膜トランジスタ
Project/Area Number |
23360137
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
浦岡 行治 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (20314536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 睦 龍谷大学, 理工学部, 教授 (60368032)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 薄膜トランジスタ / シリコン / レーザ照射 / 水中レーザ / ディスプレイ |
Research Abstract |
今年度は次世代ディスプレイの実現に向けた多結晶シリコン(poly-Si TFT)薄膜トランジスタの低温形成および高性能化についての研究を行った。多結晶シリコン薄膜トランジスタ(TFT)は優れた電気特性を有し、高精細ディスプレイや多機能ディスプレイの駆動素子に用いられている。poly-Si TFTをプラスチック基板上に作製できれば、システム・オン・フレキシブルディスプレイといった次世代ディスプレイが実現できる。その為には、結晶化・欠陥不活性化工程を200°C以下に低温化する必要がある。本研究ではpoly-Si TFTの200°Cでの作製および粒内・粒界を区別した局所電気特性評価の確立を目指した。poly-Si TFTを200°C以下の超低温で作製する技術として、水中で試料へレーザー照射を行う「水中レーザーアニール:WLA」を提案した。従来の一般的手法である大気中レーザーアニール(LA)にて形成したpoly-Si膜と比較して、WLAでは大粒径かつ均一な結晶粒、すなわち高品質poly-Si膜が形成された。 また、WLAによりプラスチック基板上でpoly-Si薄膜を形成した結果、結晶化率の最大値は96%でガラス基板上WLA poly-Siと同等であり、プラスチックフィルム上においても、高品質poly-Si膜の形成を実現した。続いて、WLAによるpoly-Si TFTの欠陥不活性化を試みた。WLA後TFT特性は改善し、移動度が約30%増加し、オン/オフ比とS値も向上した。さらにpoly-Si膜の水素濃度増加が認められ、WLA中に発生した水蒸気中の水素によって電気的欠陥が補償され、特性が向上したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
以下の示すように、当初の計画以上の成果を挙げた。 WLAによりプラスチック基板上でpoly-Si薄膜を形成した結果、結晶化率の最大値は96%でガラス基板上WLA poly-Siと同等であり、プラスチックフィルム上においても、高品質poly-Si膜の形成を実現した。続いて、WLAによるpoly-Si TFTの欠陥不活性化を試みた。WLA後TFT特性は改善し、移動度が約30%増加し、オン/オフ比とS値も向上した。さらにpoly-Si膜の水素濃度増加が認められ、WLA中に発生した水蒸気中の水素によって電気的欠陥が補償され、特性が向上したと考えられる。以上のように、WLAを用いることによってpoly-Si TFT作製プロセスにおける2つの高温プロセスの低温化を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は高性能な薄膜トランジスタの開発(駆動部)及び無機EL蛍光体の低温形成(発光部)を提案するものであり、それぞれのテーマを平行して実施する。薄膜トランジスタの形成においては、水中レーザによるシリコン薄膜の結晶化、チャネル表面欠陥の不活性化、不純物の活性化を中心に研究を展開、蛍光体の形成に関しては、マイクロ波照射に伴う輝度向上ならびに微粒化による蛍光体層の薄膜化を中心に研究する。特に、性能・信頼性の評価には、プローブ顕微鏡を用いた局所的電気評価、発光解析手法を用いたホットキャリア劣化解析を実施することで、プラスチック基板上に単結晶LSI並みの駆動回路を実現する。最終年度には、それぞれのテーマの合体により、パネルデバイスの試作と動作実証、並びに課題の抽出を行う。共同研究者間の綿密でかつ有機的な連携によって、着実な成果に結びつける。
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