2012 Fiscal Year Annual Research Report
(Cu,C)系積層構造を用いた高臨界温度・レアアースレス超伝導薄膜材料の創成
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23360139
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
寺田 教男 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (20322323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小原 幸三 鹿児島大学, 理工学研究科, 教授 (10094129)
奥田 哲治 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (20347082)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 超伝導材料・素子 / 薄膜 / 表面・界面物性 / 量子エレクトロニクス |
Research Abstract |
(Cu, C)1201相薄膜を基幹とする人工積層構造におけるヘテロ界面制御による超伝導特性の極限追求、構成元素同時供給による多層型(Cu, C)系超伝導薄膜形成技術の開発を目標として、今年度は(Cu, C)-1201相極薄膜の伝導性・超伝導発現の支配要因である(Cu, C)-1201層/無限層構造SrCuO2バッファ層界面における歪効果の最適化、多層型薄膜作成に必要な、高酸素圧力での再現性良い成膜実現のための装置の改良を行った。その結果、[1] SrTiO3(001)面上に歪成長するSrCuO2層の層厚が8 ~ 12 nmのとき、1201層のホール濃度・電気伝導度が最大、28 K以上のゼロ抵抗温度が得られること、[2]圧縮性歪みが弱化するSrCuO2層厚12 nm以上では金属的伝導が維持されるものの超伝導特性が劣化し、一方、格子ミスマッチが大きい層厚8 nm以下では常伝導特性が半導体化、超伝導転移が消失した、SrTiO3 (001)面に直接堆積した極薄層と類似の特性となること、これらから[1]の良好な超伝導特性の発現が圧縮性界面歪誘起ホールドープに起因すること、印可可能な歪みに上限が存在することが明らかとなった。続いて、[3]界面歪を上記の範囲とした繰り返し積層構造を作製したところ,超伝導特性の向上が見られ、界面歪の最適化が超伝導発現領域を複数の層厚方向に拡大・均一化会うることに有望なことが明らかとなった。また、昨年度立ち上げたPLD装置の基盤加熱、排気機構を改良することにより、成膜時の酸素圧力 > 60 Pa、成長温度 > 650 °C、炭酸ガス分圧精度を10^-4 Pa以上での繰り返し成膜を可能とした。これを(AE)-Cu-O系膜の成長に適用したところ,(Cu, C)系関連構造の成長が確認され、同装置が多層型(Cu, C)系の薄膜化に適することが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主要課題は、独自に見出した(Cu, C)1201レアアース・レス超伝導薄膜を基幹する系に注目し、その構造制御・人工積層化により高特性化し、その極限特性を見極めること及び多層型(Cu, C)系の実用的作製技術を開発することにある。 本年度の成果は、この系における超伝導発現に非超伝導(電荷供給)層と超伝導層間の界面歪が重要な因子となっていること,それの最適化により極薄層における超伝導特性の向上が達成されること、難合成な本系における超伝導発現部位を下地との界面近傍の局所領域から積層構造全体に拡大可能であることを明らかにしている。また、多層型(Cu, C)系の同時堆積による成長に向けた装置改造に成功し、高酸素圧雰囲気・精密ガス種制御下での成長により関連構造の成長に成功している。これらから、順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
1)非超伝導層/(Cu, C)-1201界面における歪みが一定の試料、成長にしたがって歪みを変化させた試料の系等的に作製し、その超伝導特性の評価と、in-situ低温光電子分光測定、ホール係数測定を並行して行う。得られる結果を作製条件にフィードバックすることにより、多層型Tl系で見出した高Tc (133 K)の発現機構[単位胞内電位分布制御による高酸化状態電荷供給層からCuO2面へのホール再分配;(Cu, C)系も類似の始状態を持つ]を(Cu, C)系での発現に向けた構造制御を実施することで、[1]この系の薄膜における超伝導特性の極限を追求する。また、[2]試料全体の臨界電流密度を評価することで、より多くの積層単位で超伝導が発現する条件を明らかにする。2)開発した高酸素圧力下での成膜に特化したPLDシステムを用いて全構成元素を同時供給する手法による高Tc-(Cu, C)系薄膜作成を行い、特性発現のための必要条件を検討し、この系の簡便かつ実用的な成長技術の基盤を確立する。 以上により、(Cu, C)系を基調とする薄膜をレアアースレス・毒性元素レスな高温超伝導薄膜材料として確定し、その作製技術を開発する。
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Research Products
(9 results)