2012 Fiscal Year Annual Research Report
化学修飾したナノ粒子による有機・無機ハイブリッドの新機能性と革新的デバイスの創成
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23360140
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
内藤 裕義 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90172254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永瀬 隆 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (00399536)
小林 隆史 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10342784)
松川 公洋 地方独立行政法人大阪市立工業研究所, その他部局等, 研究員 (90416321)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 電子・電気材料 / 電子デバイス・機器 / 半導体物性 / 光物性 / 太陽電池 |
Research Abstract |
本研究は、表面を化学修飾したシリカナノ粒子と有機半導体からなる有機・無機ハイブリッドにおいて新規な機能性を発現させ、その発現メカニズムを明らかにする。さらに、見出した機能性を用いた薄膜トランジスタ、太陽電池などのフレキシブルかつプリンタブルなデバイスを構成し、従来の有機デバイスと比較して、革新的に製造プロセスが簡単になり、デバイス特性が向上することの実証を目的とする。本年度は、昨年度に引き続き、極めて高い正孔電界効果移動度を有することで知られているdioctylbenzothieno[3,2-b] benzo thiophene (C8-BTBT)を対象とし、電界効果移動度などの電子物性を評価した(シリカナノ粒子添加C8-BTBTの塗布特性向上および結晶性の向上は昨年度実証)。電界効果トランジスタのソース・ドレイン埋め込み電極構造作製プロセスを最適化することで低駆動電圧化を実現した。さらに、動作安定性を評価し、数値目標であった閾値電圧ばらつき±1 V以内を達成した。 バルクヘテロ接合太陽電池の開発のため、太陽電池作製プロセスを最適化した(昨年度、P3HT:PCBM系において電力変換効率3.5%を達成)。本年度はPTB7、PC71BMにより電力変換効率7.4%を達成した。インピーダンス分光でPTB7:PC71BMの電子、正孔移動度を評価したところ、電子、正孔の移動度比が1に近づくほど効率が上がることを見出した。また、この結果をデバイスシミュレーションにより定性的に再現することができた。ここで、P3HT: poly(3- hexylthiophene)、PCBM: phenyl-C61-butyric acid methyl ester (PCBM)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シリカナノ粒子添加の効果を明確にするためには、無添加時のデバイス特性を予め最適化しておく必要があり、このため、昨年度、本年度は電界効果トランジスタ、薄膜太陽電池の作製プロセスを最適化した。この結果、数値目標であった電界効果トランジスタの動作安定性(閾値電圧ばらつき±1 V以内)を達成した。さらに、予想していなかった成果として、ソース・ドレイン埋め込み電極構造作製プロセスを最適化することで低駆動電圧化を実現した。 昨年度はP3HT:PCBMバルクヘテロ接合太陽電池を最適化したが、本年度はP3HT:ICBAバルクヘテロ接合太陽電池を最適化し、電力変換効率5%を実現した。さらに、PTB7:PC71BMバルクヘテロ接合太陽電池を最適化し、電力変換効率7.4%を実現した。この数値は世界最高水準の値である。これらバルクヘテロ接合太陽電池でインピーダンス分光を行い、電子、正孔移動度を評価する手段としての有用性を実証した。電力変換効率と電子・正孔移動度比との相関を実験的に明らかにし、高効率化への指針を実験的に明らかにした。さらに、デバイスシミュレーションも行い、実験結果が理論的にも理解しうることを明らかにした。 ナノ粒子添加による新しい機能は探索中であるが、薄膜太陽電池のプロセス最適化、高効率化、薄膜トランジスタの低駆動電圧化、高安定化を行うことができた。このような成果を総合的に見て上の自己評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
電界効果トランジスタの高移動度化の数値目標として10cm2/Vsをあげているが、現在のところC8-BTBT多結晶半導体薄膜では最高値として5cm2/Vsである。この値自体、現在液晶テレビのバックプレーンとして用いられているアモルファスシリコン(1cm^2/Vs)を上回り、ナノ結晶シリコンと同程度の値である。現在注目されている酸化物半導体トランジスタ、IGZO、と同程度の値(10cm2/Vs)を実現するために、新たな有機半導体およびそれへのナノ粒子添加効果を精力的に調べていく予定である。 さらに、有機トランジスタの応用としては、5ミクロン程度の短チャネルトランジスタで1cm2/Vs以上の移動度を達成する必要がある。このため、短チャネルトランジスタの最適化にも注力する。一般に有機トランジスタでの最高移動度は100ミクロン以上の長チャネルトランジスタで議論されることが多く、実用化には結びつかない。短チャネルにすると電極と半導体の接触抵抗の影響が大きく出るために短チャネルで1cm2/Vs以上の移動度を達成できたとする報告はほとんどない。 有機薄膜太陽電池の最大変換効率をさらに向上させるため、PTB7:PC71BM系で太陽電池構造の最適化(直列抵抗の低減、バルクヘテロ構造の膜厚の最適化)を行い、現在の値(7.4%、文献値と同程度)から一層の高効率化を目指す。移動度測定法としてのインピーダンス分光の有用性を示していくと同時にトランジスタ、太陽電池ともデバイスシミュレーションを併用した高性能化を行う。 ナノ粒子を添加した有機・無機ハイブリッドの新機能性を明らかにするため、申請段階では想定していなかった機能性酸化物を用いたナノ粒子開発にも着手し、有機物だけでは実現できない新規な機能性をさらに探索して行く。
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Research Products
(46 results)