2012 Fiscal Year Annual Research Report
相変化マスクを用いた近赤外半導体ナノイメージング分光法と量子状態制御法の開発
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23360141
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
斎木 敏治 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70261196)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 量子ドット / 相変化材料 / 近接場光学 / 応力光学 |
Research Abstract |
カルコゲナイド相変化材料(GeSbTe)薄膜を光学マスクとした高分解能近赤外ナノ分光法の開発に前年度に引き続き取り組んだ。高光透過性を有するアモルファス化領域を開口として機能させ、空間分解分光を行った。観察対象としては1.3~1.5umにて発光するInAs/InP量子ドットを用意し、その上にGeSbTe薄膜を成膜した。GeSbTe膜厚、ならびにアモルファス化条件(レーザフルエンス・照射回数)を最適化することにより、前年度より小さく、安定したアモルファス開口形成が実現した。さらに金属遮光膜を施さない近接場プローブを用いて光をサブ波長まで集光する技術と組み合わせることにより、より小さなアモルファス開口が形成でき、空間分解能が大幅に向上することを確認した。 相変化時の体積変化にともなう応力印加を利用した量子ドット発光エネルギー制御法の高度化を推進した。GeSbTe膜上にSiO2を成膜し、応力が主に量子ドット側に印加されるよう工夫した。複数パルス照射によるアモルファス化・結晶化(フルエンスで調整)によって、段階的かつ可逆的な発光ピークシフトが確認され、精度良く所望の発光エネルギーを得ることを確認した。最大エネルギーシフト量としては2meVという値が得られた。また、相変化にともなう発光エネルギーのシフト方向がドットごとに異なることが見い出された。応力分布のシミュレーションにより、相変化箇所(応力印加箇所)とドット位置の相対的な関係に依存して、両方向のシフトが再現され、実験と整合する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光学マスクによる空間分解能(アモルファス開口サイズ)は当初の計画通りの値が達成されている。イメージングに関しても、開口の形成・消去を安定に行うことができており、予定していた予備実験を終えた。 局所応力印加による発光ピークシフトについても、計画立案時に期待していた段階的、可逆的シフトを確認することができた。応力印加にともなってレッドシフト、ブルーシフトの両方向の変化が得られることは想定外であったが、応力シミュレーションによりこの振る舞いを説明することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
高分解能化・高コントラスト化に向けて、相変化材料の組成を検討する。特に、GeSbTeよりも相変化しきい値が明瞭だと予想されるGeTeを中心に検討する。また、ドーナツビーム照射加熱による結晶化と組み合わせることにより、さらに小さなアモルファス開口形成を目指す。 これまでの予備実験をもとに、アモルファス開口の形成と結晶化による消去を繰り返すことによって開口を走査し、イメージング分光を実証する。 近接場光学顕微鏡を用い、相変化箇所の周辺でスペクトルのマッピングを行い、応力分布シミュレーションから推測されるピークシフトと対比する。 精密な応力印加により隣接する複数の量子ドットの量子準位を独立にチューニングし、ドット間の相互作用を制御することを試みる。超放射や準位反発などの現象の観測を視野に入れる。
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