Research Abstract |
磁気センサは,地磁気,モータの回転角,生体からの磁気の検出など,幅広く利用されている。巨大磁気抵抗効果(GMR)を利用した磁気センサは,フラックスゲートセンサや磁気インピーダンスセンサに比べ,薄膜でマイクロサイズまで微細化できることから,半導体回路とモノリシック化できるなどの大きな利点がある。本研究では,GMR等の磁気抵抗素子を利用したさまざまな機能をもつ磁気センサの開発に取り組んだ。まず,スピンバルブ構造の磁化自由層の磁壁に交流磁界を加えて,磁壁位置を振動的に運動させることで,磁壁抗磁力の影響を大幅に低減して,磁界感度を改善する方式を開発した。磁化自由層にCoFeBアモルファス層を利用することで,長方形の磁区が形成され,磁壁位置が交流磁界で変調されることをKerr顕微鏡で確認した。この方式により,8nTまでの微小磁界の検出に成功した。また,磁化自由層の磁化方位を交流磁界で首振り運動させる磁化方位変調方式のセンサを開発した。このセンサでは,外部磁界を加えると,センサ出力の信号周波数が,交流磁界の周波数の2倍から1倍に変化するので,1倍周期の信号振幅をロックインアンプで検出することで,高感度の直流磁界が検出できた。さらに,この方式では,直流磁界の零点の設定を可変抵抗によって行う必要がなく,高精度の直流磁界の検出が出来ること,また,温度変化による出力のドリフトがほとんどないことが実験的に明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までに3つの方式の磁気抵抗センサの開発に成功し,磁壁位置変調方式では,8nTという微小な磁界の検出に成功している。また,磁化方位変調方式では,温度ドリフトが従来のGMRセンサより2桁程度小さいセンサを開発できた。さらに未発表ではあるが,新しい機能を持ったセンサの開発も進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発した3つの方式について,それぞれ特性の向上を下記のように推進する。磁壁位置変調方式に関しては,磁壁をトラップするナノサイズの切り欠きをGMR細線に入れることで,磁壁が常に同じ位置で振動するようなデバイスを作製する。これにより,センサ特性が安定し,より低ノイズの検出が可能となると期待される。磁化方位変調方式に関しては,信号の検出に高価なロックインアンプでなくワンチップの掛算器を利用した回路を開発する。現在は,ロックインアンプを利用しているので,フィードバック回路を構成した場合,回路サイズが大きくなりすぎてノイズの低減が難しいが,掛算器の利用により,回路が1つのボード上に集積され,ノイズが低減されると考えられる。
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