2011 Fiscal Year Annual Research Report
大容量・省エネルギーな次々世代情報ストレージ開発に向けた三次元磁気記録の研究
Project/Area Number |
23360160
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
能崎 幸雄 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (30304760)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松山 公秀 九州大学, 大学院・システム情報科学研究院, 教授 (80165919)
山口 明啓 産業技術総合研究所, ナノスピントロニクス・研究センター, 研究員 (70423035)
|
Keywords | マイクロ波アシスト記録 / 強磁性共鳴 / 垂直磁気異方性 |
Research Abstract |
本年度は、三次元磁気記録実現の要素技術の確立に向けた研究を行い、下記の成果を得た。 (1)垂直磁化膜の作製と強磁性共鳴特性の制御 マグネトロンスパッタ装置を用いて垂直磁化Co/Pd多層膜(保磁力1.2kOe、異方性磁場18kOe)を作製し、その強磁性共鳴特性を測定した。また、マイクロ波インパルスの印加によるFMRスペクトルの変化をベクトルネットワークアナライザを用いて測定し、26~29GHzの周波数のマイクロ波印加により、Co/Pd多層膜の磁化反転が容易化することを確かめた。マイクロマグネティクス計算により、Co/Pd多層膜の保磁力のマイクロ波周波数依存性を詳しく調べた結果、交換スティフネス定数が1×10^<-7>erg/cm以上になるとマイクロ波アシスト周波数が増加すること、1×10^<-8>erg/cm以下では磁化反転が島状化することを明らかにした。以上より、比較的低いマイクロ波周波数で均一性の良いマイクロ波アシスト記録を行うためには、垂直媒体の交換スティフネス定数を最適化する必要があることがわかった。 (2)複合膜のマイクロ波アシスト磁化反転(MAMR)シミュレーション 磁気特性の異なる3層構造媒体に対する選択的信号記録シミュレーションを行い、選択的信号記録が可能なマイクロ波周波数帯域の飽和磁化依存性を調べた。さらに、熱擾乱に対する磁化安定性を保持可能な条件で選択記録可能な周波数の膜厚依存性を調べた。その結果、層間の静磁的相互作用によるクロストーク無しに選択記録可能な飽和磁化、及び膜厚の条件を明らかにした。 (3)複合膜のダンピング定数制御 マイクロ波アシスト記録に不可欠な媒体のダンピング定数制御を実現するため、磁化ダンピング特性の明らかなNiFe合金薄膜に異種材料を接合した場合の強磁性共鳴スペクトルの変化を調べた。その結果、YIGスパッタ膜の接合により、高次のスピン波励起に対するダンピングを増加できることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究目的である、単層構造を有する垂直磁化媒体のマイクロ波アシスト磁化反転の実験的検証と、数値計算による積層構造媒体の選択的マイクロ波アシスト記録実現に向けた条件解明において、当初見込み通りの成果が得られたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
実用媒体に近い高磁気異方性媒体のマイクロ波アシスト記録の実験を進め、実用化に向けた課題の解決を図る。さらに、各記録層をECC構造化(磁気異方性エネルギーの異なる複数の磁性層を交換結合させた媒体)することにより、積層構造媒体の選択的記録可能な周波数マージンを増加させることができるかどうかをマイクロマグネティクス計算により詳しく調べる。これらの結果を集積することにより、実際の記録ヘッドで発振可能なマイクロ波周波数での三次元記録の実現可能性を示したい。
|
Research Products
(19 results)