2012 Fiscal Year Annual Research Report
ピコリットル液量制御30GHz帯域MEMS可変キャパシタの研究
Project/Area Number |
23360165
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
鈴木 健一郎 立命館大学, 理工学部, 教授 (70388122)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 流体 / 高周波 / フィルタ / EWOD / 表面張力 / 可変キャパシタ |
Research Abstract |
本研究は、広帯域可変RF-MEMSフィルタに純水を用いて誘電率を80倍も可変できる新たな原理による斬新な機構を研究・開発するものである。特に大幅な周波数可変を実現するために、ピコリットルの水の蒸発を抑え、これを制御する流路や制御システムを理論的に明らかにし、MEMS (Microelectromechanical Systems)技術を利用してデバイスを構築・実現する点が独創的である。今まで行ってきた研究の蓄積から、水の搬送によって13倍を超える大幅な周波数可変フィルタが実現できることは検証できており、この成果を発展させ、本研究では、ピコリットルの水を制御し、周波数を可変にするための流体力学や電気二重層などの理論解析・構築と30GHz以上の高周波帯で利用することが可能なデバイス開発を行うことを目的にしている。 今まで数多くの流体の駆動研究が報告されているが、キャパシタ応用に適合させるためには、非常に微小な(0.1nl)液滴を7μmギャップの狭い流路内でEWOD技術を利用して電気駆動させたときに発生する諸問題の解明を行う必要があった。本年度までに、ギャップ10μmの流路内を1nlの微量液滴を移動させることに成功した。この際、150V程度の高い駆動電圧が必要とされるが、これは流路内部の摩擦による影響であることを強く示唆するデータを得ることができた。また、交流静電気力を用いることにより摩擦を軽減させることが可能であることを見出し、今回、75Vrmsまで駆動電圧を低減させることができた。この流体可変キャパシタを利用したフィルタの作製を行い、0.4-6GHzの広い範囲にわたって動作する可変フィルタの実証に成功することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
10μmギャップ中の液的駆動に成功した。これは目標とする7μmギャップに近いものであり、研究開始時の100μmギャップに比べて著しい進歩であると確信できる。また、フィルタを実際に試作して、周波数範囲が10倍もある広い範囲にわたってフィルタが動作することをデモすることができた。これにより、本研究が原理的実証にとどまらず、実際の応用にも十分に適応できることを明らかにすることができた。 この研究成果をシンポジウムおよび各種の展示会で公表を行い、展示会で優秀賞を獲得することができた。また、マスコミがこの成果に注目して、専門ジャーナルに記事を掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
駆動電圧が高いことが課題である。この高い駆動電圧のために、デバイス内部の絶縁膜の破壊が進み、デバイスの信頼性が低くなることが明らかになった。これを解決するために、駆動原理を詳細に解明すると同時に、交流静電気力の改良を進めていく。さらに、従来のEWODの変わる液的搬送方法の検討を行う予定である。 今後、我々は、4個のキャパシタと2個のチップインダクタをT型に配列したバターワース3次低域通過(LP)フィルタの試作を行い、フィルタの中心周波数が0.4-6GHzの広い範囲で8段階に変化することをデモンストレーションする。さらに、MEMSキャパシタとモノリシックインダクタを集積化したモノリシック可変MEMS帯域通過フィルタ(BPF)フィルタの設計試作を行い、その基本性能の実証を行う。これらの実証により、本研究の成果が実際に役立つことを実証する。
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Research Products
(3 results)