2011 Fiscal Year Annual Research Report
超伝導光子検出器の多画素化のための広帯域・広ダイナミックレンジ読出回路
Project/Area Number |
23360182
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
神代 暁 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 研究グループ長 (60356962)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 文紀 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 主任研究員 (10357866)
山森 弘毅 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 主任研究員 (00358293)
福田 大治 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員 (90312991)
日高 睦夫 財団法人国際超電導研究センター, 超電導工学研究所・デバイス研究開発部・低温デバイス開発室, 室長 (20500672)
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Keywords | センシングデバイス / 超伝導デバイス / マイクロ波デバイス / 放射線検出器 |
Research Abstract |
超伝導転移端検出器(TES)16画素からの読出信号の4-8GHz帯における多重化実証を目標とし、その第一段階として、周波数多重回路を構成する二大要素素子のうち超伝導共振器のみを含むチップ(5mm×5mm)の設計・試作・特性評価を行った。各共振器は長さの異なる終端短絡のコプレーナ線路から成り、その線路は、チップ寸法との兼ね合いから、途中に複数の屈曲部を持つ。周波数軸上の多重化にとって最も重要な共振周波数実測値と設計値の比、および両者不一致の原因解明のため、同一の長さを持ち、屈曲部の数や曲率が異なる線路から成る複数組の共振器を準備し、それらの共振周波数を比較した。その結果、設計値で規格化した実測値は、1.00以上1.10以下であり、屈曲部の数や曲率に対する依存性と周波数依存性を示したが、共振器長補正により、理論通り周波数無依存となることを見出した。今後、標記補正値の採用により、共振周波数の実測値と設計値の差を0.02%以内に抑えられる見通しを得た。 一連の評価実験に先立ち、充分な制御性・再現性を持つニオブ系チップ作製技術を確立した。次に、チップ透過率の周波数依存性(4-8GHz帯)測定系を、4Kの機械式冷凍機ベースのクライオスタット内に構築し、チップ内グランド配線の工夫により、周波数軸上の共振ディップ深さの定量的評価に充分な、peak-to-peak値2dB以下のバックグランドレベル平坦性を実現した。また、共振周波数の温度依存性から、機械式冷凍機起因の温度ゆらぎを、それと等価な周波数雑音電力に換算する理論式を導き、チップの動作温度をTESと同じ0.4K以下とする指針を得るとともに、これを実現可能な冷却系の検討に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
素子作製施設が東日本大震災にて被災し、その復旧に予想外の時間がかかった。このため、周波数多重回路を構成するもう1個の二大要素素子である、TES信号読出用可変インダクタンス(SQUID)を集積化したチップの作製・評価を次年度に持ち越すこととなった。一方で、マイクロ波測定系構築は当初目標を達成するとともに、TESとの協調動作に関する検討を前倒しで進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた共振器設計指針を反映したSQUID集積化チップの作製・評価により、周波数多重回路の基本動作実証と性能評価に進む。特に、複数画素からの信号読出実証と相互干渉度評価や、本研究において独自提案した広ダイナミックレンジ化手法の評価を重点的に行う。また、TESとの協調動作実証実験のプラットフォームになるとともに周波数多重回路の雑音特性評価に適した、0.4K以下のチップ温度を確保できる冷却系の検討を進める。
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