2012 Fiscal Year Annual Research Report
音響トモグラフィー法による新しい河川流量観測技術の検証と確立
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23360214
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川西 澄 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40144878)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金子 新 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10038101)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 河川流量 / 音響トモグラフィー / 洪水 / 水資源 |
Research Abstract |
25kHzのトランスデューサーを用いた河川音響トモグラフィーシステム(FATS)による連続流量計測は順調であった.感潮河川である太田川放水路では,当該年度の最大出水時(太田川流量800m3/s)における分派流量の連続計測に成功した(最大350m3/s,潮汐の影響を受けて流量ピーク発生時間に遅れが発生していることを確認).さらに,塩水遡上のある複雑な流れ場における流量計測精度を向上させるため,両岸に4つのトランスデューサーを配置して作ったクロス音線を用いて流向を計測し,ADCP横断計測の結果と比較した結果,FATSの断面平均流速・流量・流向はADCPの結果と良く一致した.一方,礫床河川である江の川において,20~500m3/sの流量範囲でADCP横断計測と比較した結果,両者の残差の標準偏差は9m3/sと小さく,FATSは十分な流量計測精度を有していることが確認された.平均水深が1m以下の低水時は水深の低下とともにFATSのSN比は低下したが,約0.5mまでは計測可能であった.また,低水時のSN比は日射による水温分布の影響を受け,日射がSN比を低下させることが分かった.ダムのフラッシュ放流における流量観測から,浮遊土砂と不均質な水温場が音波伝播に与える影響を調べた.その結果,冷たい放流水が作り出す不均質な温度場は,浮遊土砂と同等以上の音波の伝播損失を発生させることを明らかにした.クロス音線法により,FATSとADCP横断計測流量との残差は,7.6m3/sから5.0m3/sへと減少し,流量計測精度の向上が確認された.浮遊土砂や不均質な温度場は音波の伝播損失を引き起こし,FATSのSN比を減少させたが,減少量は小さく,流量計測に支障をきたすことはなかった.出水期にむけて,長い音線距離(800m)がとれる太田川高瀬堰貯水池で,10kHzトランスデューサーによる予備実験を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的としていた感潮河川である太田川放水路と礫床河川である江の川の流量の連続観測に成功し,浮遊土砂や水深,水温・塩分場が音波の伝播に及ぼす影響が明らかになりつつある.トランスデューサー ハウジング内の漏水のため,10kHzのトランスデューサーを用いたデータの取得は不十分であるが,漏水対策は完了し,現地実験の準備も完了している.
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Strategy for Future Research Activity |
25kHz音波による実験は順調に進展しているので,今後は長い伝播距離(800m)での長期連続計測を実施し,10kHz-FATSの長距離,高浮遊砂濃度に対するアドバンテージを確認する.送信波の位相変調に用いるM系列の次数を変化させ,その影響も確認する.また,トランスデューサーの設置方法を改良し,さらに大きな流量の出水,洪水の観測を成功させる.
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Research Products
(9 results)