2012 Fiscal Year Annual Research Report
地域公共交通再生のための計画技法と制度設計に関する実践研究
Project/Area Number |
23360225
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
溝上 章志 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (20135403)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柿本 竜治 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (00253716)
圓山 琢也 熊本大学, 政策創造研究教育センター, 准教授 (20361529)
池田 康弘 熊本大学, 法学部, 准教授 (70304714)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 地域公共交通 / メカニズムデザイン / 交通サービス評価 |
Research Abstract |
SG1:パーソントリップ調査によるサンプル調査の拡大による公共交通需要の推計値は,公共交通機関別の利用者実績値よりも過大に推計されるため,従来の拡大方法の補正手法を提案し,適用した結果,適切な推計値を得ることに成功した. SG2:熊本県の中山間地域において実施したパネル形式のアクティビティ・ダイアリー調査より,高齢者の行動時間や範囲は減少し,親族や知り合いによるなどの送迎に代わる交通手段の確保が喫緊の課題であることを実証的に明らかにした.さらに,乗り合いタクシーの導入による地域間のサービス水準格差の是正策を検討するためのモデルを提案した. GS3:韓国ソウル市立大学とカナダカルガリー大学との共同セミナーを実施し,公共交通輸送の再生事例やその再生メカニズムについて議論を行った. GS4:①懲罰賠償ルールについて,インセンティブの観点から考察した結果,懲罰率を高めると,加害者は裁判にて益々抗弁し,それを見込んだ被害者は提訴を手控え,その結果,加害者が生産活動を続けるということが明らかになった.このモデルの枠組みと知見は,バス輸送事業者と利用者の行政へのロビー活動の文脈においても適用可能であることを示した.②バス路線の運行契約の1つである補助金の交付方法について,インセンティブ報酬を取り入れた補助金交付方法の定式化を行った.熊本都市圏で近く導入が予定されているゾーンシステムから成る再編バス路線網のうち,赤字が予想される路線にこのインセンティブ報酬モデルの適用した結果,補助金の削減委貢献することが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各研究組織と分担者が,それぞれの研究計画に基づき,順調に当初の研究目的をおおむね達成している.特にSG4については,研究成果が出ており,学術誌への投稿論文や国内外での口頭発表会で公表してきた.
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Strategy for Future Research Activity |
SG1:2012年に実施された熊本都市圏パーソントリップ調査によるバス停間トリップ数をプリペイド方式磁気カードによるバス停間乗車記録データによって補正し,高精度化する手法を開発する.また,パーソンプローブデータによるシート式調査データの補完方法についての可能性について検討する. SG2:①交通需要の低い地域で,近年,その導入が盛んになってきている乗合タクシーサービスの実態を把握し,その課題を明確にした上で,過疎高齢化が進む中山間地域で持続可能な交通サービスを検討するための需要予測とサービス評価のための手法を開発,適用する.②交通サービスの質をcapabilityの視点から評価することが可能なQOMモデルの精緻化と適用可能性の向上のための実証研究を蓄積する. SG3:8月29~31日に公共交通サービスに対するメカニズムデザインに関する国際セミナーを熊本大学で開催し,海外,国内の公共交通再生・活性化のための政策や技術についての研究成果の発表と情報交換を行う. SG4:①インセンティブの観点から考察した懲罰賠償ルールについての知見をもとに,バス事業者,および利用者の交通計画当局へのロビー活動とみなす枠組みを表現するモデルを構築する.これを地域公共交通システムの制度設計に適用して,地域公共交通の再生に有効かどうかを検証する.②運行頻度を未知変数の一つとし,需要変動を内生化した,より一般的な地域公共交通システムに対するインセンティブ補助モデルを提案する.このモデルを地方部の路線バス網に適用し,決定変数に対する権限の付与の違いによる解の特性や適切な政策を明らかにする.
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