2012 Fiscal Year Annual Research Report
亜ヒ酸酸化細菌を用いた地下水からの新規ヒ素除去装置の開発
Project/Area Number |
23360230
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
海田 輝之 岩手大学, 工学部, 教授 (30117072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 歩 岩手大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (90312511)
石川 奈緒 岩手大学, 工学部, 助教 (10574121)
中村 寛治 東北学院大学, 工学部, 教授 (90382655)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 亜ヒ酸 / 地下水 / 酸化 |
Research Abstract |
秋保温泉浄化センターより採取した活性汚泥を、有機物を含まず、亜ヒ酸を100mg/L含む培地(25℃、120rpm)で継代培養し、亜ヒ酸耐性を有する菌を分離した。電子顕微鏡の観察結果より、桿菌が主要な細菌であることが分かった。さらに、16S rRNA遺伝子に基づく分子系統解析を行った。また、分離した細菌群の亜ヒ酸酸化速度は、単一基質の酵素反応速度式であるMichaelis-Mentenの式に従うことが分かった。 次に、亜ヒ酸酸化細菌の固定化担体として、円筒形のスポンジ(直径約3cm、長さ約3cm、体積約21cm3、空隙率約0.98)を15個吊り下げた装置を作製し、上部から亜ヒ酸を含む人工地下水を滴下し、自然流下によりリアクター底部より流出させた。流入亜ヒ酸濃度は1mg/L及び0.5mg/Lとし、各濃度で水理学的滞留時間を3hから0.5hまで各滞留時間で定常状態になるまで運転した。その結果、滞留時間0.5hまでは各流入亜ヒ酸濃度で95%以上連続酸化処理が可能であることがわかった。また、亜ヒ酸濃度の流下方向の濃度分布より、流入亜ヒ酸濃度0.5mg/Lの場合、滞留時間3hおよび2hでは5個目、1hでは10個目、0.5hでは15個目までにはAs(III)がほぼ酸化されていた。1.0mg/Lの場合、滞留時間3hおよび2hでは5個目、1hでは10個目まででAs(III)がほぼ酸化されており、0.5hでは25個目までで徐々に酸化されていた。さらに、スポンジに付着した細菌数は、上部で8E9、下部で5E8個/スポンジ程度であり、この分布は亜ヒ酸濃度の低下と良く対応しており、亜ヒ酸の酸化が単体に付着した細菌によって行われていることを確認した。特に、本研究で採用した装置は無曝気で、特別な運転操作を必要とせず亜ヒ酸の酸化が充分に行われることに優位性があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
亜ヒ酸酸化能を有する細菌については、秋保温泉浄化センターから採取した活性汚泥を有機物を含まない培地で継代培養を繰り返し、数種の細菌を分離し、分子系統解析を行っている。また、亜ヒ酸酸化能を有する細菌を用いた連続酸化に関しては、スポンジ担体を用いた装置を作成し、流入水中の亜ヒ酸濃度を0.5及び1.0mg/Lとして、水理学的滞留時間を3時間から0.5時間まで低下させた実験を行い、滞留時間が1時間以上であれば、流入亜ヒ酸の95%以上がヒ酸に酸化されることを明らかにした。以上のように、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
①亜ヒ酸酸化能を有する細菌の系統解析 秋保温泉浄化センタ-の活性汚泥から昨年度分離した亜ヒ酸酸化能を有する数種の細菌について、16S rRNA遺伝子に基づく分子系統解析と電子顕微鏡による観察を行う。 ②亜ヒ酸酸化能を有する細菌の機能評価 ①で分離した細菌について、亜ヒ酸酸化速度に及ぼす溶存酸素濃度、亜ヒ酸濃度、pH、水温、有機物濃度の影響を回分実験により明らかにする。 ③亜ヒ酸酸化能を有する細菌を用いた亜ヒ酸除去装置の開発 ①で分離した細菌を用いて亜ヒ酸の連続的除去装置の開発を行う。昨年度に引き続き、細菌の固定化のための担体としてスポンジ担体を鉛直方向に吊り下げた固定床方式を採用し、連続処理の可能性を検討する。今年度は流入水にFe(II)を添加し、スポンジ担体内で亜ヒ酸とFe(II)双方の酸化を行い、Fe(III)にヒ酸を吸着させて亜ヒ酸の除去を行う。操作パラメ-タ-としては、流入亜ヒ酸及びFe(II)濃度と水理学的滞留時間とし、流入水、流下途中のスポンジからの流出水及び最終流出水中の亜ヒ酸及びヒ酸濃度を測定し、定常状態になるまで運転する。その後、滞留時間を変えて同様の実験を行いい、亜ヒ酸のヒ酸への酸化における最適操件を明らかにする。さらに、スポンジ担体に固定化された細菌数の流下方向の変化を明らかにする。なお、流入水の主要パラメーターのpH、水温、栄養塩や有機物濃度は、出来るだけ地下水の典型的な質と濃度とする。 ④開発した亜ヒ酸除去装置の経済性評価 既存の酸化剤を用いた亜ヒ酸酸化法と比較して、本研究で開発した装置の経済的優位性を検討する。
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Research Products
(2 results)