2011 Fiscal Year Annual Research Report
知的作業の一時中断に着目した知的生産性変化の数理モデル化に関する研究
Project/Area Number |
23360257
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下田 宏 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (60293924)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 裕剛 京都大学, エネルギー科学研究科, 助教 (00324674)
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Keywords | 知的生産性 / 生理指標計測 / 数理モデル / 知的タスク |
Research Abstract |
平成23年度は、(1)生理指標や動作等を計測することによりオフィス執務者の「作業状態」と「一時中断状態」を判別する方法を開発するとともに、平成24年度以降に実施する実験準備として(2)実験タスクを設計・開発する。 (1)に関しては、26人の被験者(有効データ21)に対してタスクを与えたときの、脳波、心拍、瞬目、眼球運動、タスク操作を計測した。被験者に与えたタスクは、1桁加算、3桁暗算加算、伝票分類、テキストタイピング、ブロック組立の5種類である。被験者にはタスク実施中の30秒ごとに(a)集中して作業する状態、(b)思考せずに指だけ動かす状態、(c)休憩(一時中断)状態の3つを順に実行してもらい、その際の生理指標をポリグラフにより計測した。その後、被験者に(a)~(c)の状態を自由に切り替えてもらいながらタスクを実行している状態での生理指標も計測した。 実験で得られた計測データより、指定した3状態での計測結果を教師データとする状態判別アルゴリズムを開発した。このアルゴリズムにより、自由に3状態を切り替えながらタスクを実行してもらった時の計測結果を判別した結果、その正検出率は平均して59.0%であり、無作為に検出した場合の正検出率(正検出率期待値)に比べて平均して13.6%高かった(p<0.001)。特に、5つのタスクのうち心的負荷が高い3つのタスクでは正検出率が正検出率期待値に比べて有意に高かった(p<0.001)。 (2)に関しては、タブレットPC等の情報機器で簡単に利用可能で、かつその際の操作記録が精度よく計測できる知的タスクとして、1桁加算、2~4桁暗算加算、伝票分類、伝票チェック、テキストタイピングの各タスクを設計・開発した。このうち、1桁加算、3桁加算、伝票分類、テキストタイピングは(1)の実験で利用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に記載の平成23年度の研究計画はおおむね実施した。ただし、生理指標からの「作業状態」と「一時休憩状態」の判別アルゴリズムについては、また判別精度向上の余地があると思われる。一方、実験タスクの設計・開発については、タスク設計の方針を固め、研究計画より多彩なタスクを設計・開発した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画では、知的作業者の状態を「作業状態」と「一時中断状態」の2状態に分類して、その各状態を遷移する数理モデルを提案していたが、平成23年度の実験結果を詳細に分析すると、「作業状態」中にも短い時間の「短期中断状態」が発生することがわかってきた。さらに、これは「一時中断状態」への遷移のように精神疲労(Mental Fatigue)により状態遷移確率が変化するような複雑な状態遷移ではなく、単純なマルコフモデルで表すことができそうなことがわかってきた。平成24年度以降の研究では、「作業状態」と「一時中断状態」の2状態だけでなく、これに「短期中断状態」を加えた3状態として数理モデルを構築していく。
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