2012 Fiscal Year Annual Research Report
オープンプランにおけるスピーチプライバシ保護のためのハイブリット設計技術の開発
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23360258
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森本 政之 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (10110800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 洋 独立行政法人産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (10260423)
佐藤 逸人 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30346233)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 建築環境・設備 / 個人情報保護 / スピーチプライバシー / マスキングノイズ / 残響音 |
Research Abstract |
本研究は,オープンプランにおけるスピーチプライバシーの保護性能の総合的かつハイブリッドな設計技術を開発する。平成24年度は,設計技術の開発に必要な,室内音響の影響を評価する方法(テーマ1)と,マスキングノイズの影響を評価する方法(テーマ2)について,それぞれ検討した。 テーマ1については,平成23年度に行った心理実験の結果をさらに詳細に分析し,室内音響の影響の定量化を行った。その結果,SN比とSTI(Speech transmission index: 単語了解度と対応がある物理指標で,値が低いほど単語了解度が低下する)を用いた重回帰式から,STIが0.1低下すると,暗騒音の音圧レベルが2.94dB増加することと同等であることが明らかにした。また,60立米程度の空間が2つ隣接している状況について,吸音率や2つの空間を隔てるパーティションの高さをパラメータとして変化させた室内音響シミュレーションを行った。残響時間,最初に到達する音と残響音のエネルギ比,初期に到来する反射音群の時間構造などが,どの程度受聴点変化するかを確認し,平成25年度に行う心理実験の実験条件を決めるための基礎データを得た. テーマ2については,サウンドマスキングシステムのマスキングノイズとして用いられるマスカーの性能評価について,妨害力と不快感の2つの観点からマスカーの性能を評価する方法の提案を試みた。まず,マスカーの不快感を,マスカーの許容レベルを求める聴取実験により検討した。次に,単語了解度試験を行うことにより,マスカーの妨害力を検討した。不快感一定の条件と,マスカーの音圧レベル一定の条件では,妨害力が高いマスカーが異なることを示し,不快感と妨害力の2つの観点から性能評価を行うべきであることを実証した。さらに,単語了解度,マスカー及び単語の音圧レベル,不快感の4つの関係を示す等単語了解度線を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究には3つのテーマがあり,テーマ1の室内音響の評価方法と,テーマ2のマスキングノイズの評価方法について平成24年度までにある程度確立し,平成25年度にテーマ3としてそれらを統合したハイブリッドな設計技術の確立する計画であった。 テーマ1について,平成23年度に基礎的な心理実験として残響音のみが存在する音場における単語了解度試験を実施した。平成24年度には,音響シミュレーションによる詳細な音場のパラメータと抽出と,それを基に計画したさらに詳細な心理実験を行う予定であった。室内音響シミュレーションは進展がみられたが,心理実験を実施するまでに至らず,音場のパラメータ抽出に留まった。このテーマについてやや遅れが見られるが,当初計画から平成25年度にも必要であれば心理実験を行うとしており,想定範囲内である。一方,テーマ2として挙げたマスキングノイズの評価方法については,不快感と妨害力の2つの観点から評価する方法を,心理実験の結果を基に平成24年度までに確立することができた。 以上から,研究の達成度はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
オープンプランにおけるスピーチプライバシ保護性能の総合的かつハイブリッドな評価技術を開発するために,平成24年度から引き続き室内音響の評価方法(テーマ1)について研究を深化すると共に,最終的な研究目標であるハイブリッド設計技術の確立(テーマ3)に関する研究に着手する。 テーマ1については,平成24年度の計算機シミュレーションにより,特に初期に到来する透過音,回折音,反射音等の時間構造が室の条件によって様々に変わることが分かった。そこで今年度は,その初期時間構造に着目してモデル化した残響音場で単語了解度試験を行う。この実験により,初期音の到来方向や空間特性,及び後期に到来する高次反射音のエネルギとの比率が単語了解度に及ぼす影響を明らかにし,残響音の影響を音場の物理量で定式化する。なお,暗騒音は空調騒音のみを想定する。 テーマ3については,上述したテーマ1の成果,及び平成24年度に実施したマスキングノイズに関する成果(テーマ2)を比較分析し,スピーチプライバシ保護性能を予測可能な物理指標を定める。さらに実用的な評価法として,この物理指標で表されるスピーチプライバシ保護性能を,音声レベルの確率分布等を考慮することにより,数段階のランクで評価する方法を提案する。また,上述した物理指標を向上させる設計方法を確立するために,室の吸音材の配置やパーティションの形状・配置,マスキングノイズの提示レベル等をパラメトリックに変化させた計算機シミュレーションを行い,様々な室形状パターンについて最適な条件を明らかにする。
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Research Products
(6 results)