2012 Fiscal Year Annual Research Report
リラクサーのヘテロナノ組織形成機構と誘電物性の解明
Project/Area Number |
23360283
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木口 賢紀 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (70311660)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 和久 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70314424)
西松 毅 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (70323095)
山田 智明 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80509349)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | リラクサー / 強誘電体 / 極性ナノ領域 / 化学的秩序領域 / ヘテロナノ組織 / エピタキシャル成長 / 薄膜 / CSD法 |
Research Abstract |
初年度に最適化した成膜条件にて、CSD法で1:2型のリラクサーであるPb(Mg1/3Nb2/3)O3(PMN)薄膜をSrTiO3(001)単結晶基板上に001エピタキシャル成長した。100-200Vでの低加速イオンミリング法によってダメージを抑制しながら薄片化し、高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)法によりPMNの原子分解能観察を行った。 室温及び液体窒素冷却温度にて、金属イオンだけでなく酸素イオンを含めた結晶構造像の撮影に成功した。[110]方位からの投影により、PbカラムとTi-Oカラムに分離できるため元素の識別も可能であった。液体窒素冷却温度においても原子分解能で結晶構造像を観察した結果、150K程度の冷却下においてもPbイオンを中心に大きな原子変位をおこし、単位格子が大きく変調を受けていることから、この原子変位は構造に起因したものである。さらに、幾何学的位相解析により局所歪み場の立場から原子変位場を定量的に明らかにした。 電子回折図形からアニール温度の上昇に伴って、h/2 k/2 l/2型の超格子反射強度の増加が観察された。原子分解能HAADF-STEM観察により、BサイトイオンのMgとNbが局所的に秩序化し、化学的秩序領域を原子分解能で観察し、アニール温度の上昇により秩序領域のサイズが増加することを見出した。また、無秩序領域との間には化学的な特異構造を持たず原子レベルで急峻な界面を形成することを明らかにした。 得られた薄膜は1nA/cm2オーダーの高い絶縁性を示した。150K~300Kの温度範囲で得られた薄膜を冷却しながら誘電分散特性を評価したところ、Tm=253K付近で1400以上の比誘電率と3%程度のtanδをもち、1-100kHzの周波数範囲で誘電分散を示したことから、上記のヘテロナノ組織の観察結果がPMN薄膜のリラクサー特性を反映しているものと推察される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ペロブスカイト相Pb(Mg1/3Nb2/3)O3単相の高結晶性エピタキシャル薄膜を合成し、原子分解能でヘテロナノ組織を明らかにすると共に、誘電特性との関連についても着手できたことから概ね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
H23年度はPb(Mg1/3Nb2/3)O3(PMN)薄膜のエピタキシャル成長条件の最適化を行った。H24年度はそのPMN薄膜を用いて、極性ナノ領域(PNR)と化学的秩序領域(COR)を原子分解能で明らかにした。H25年度は、Bサイトイオンの組成比が1:2型のPMNに加えて、ヘテロナノ組織の形成挙動の大きく異なる1:1型のPb(Sc1/2Ta1/2)O3 (PST)についてもヘテロナノ組織を明らかにすると共に、誘電特性との対応を解明し、リラクサー特有のナノ組織と巨大誘電特性発現の起源の解明に取り組む予定である。
|
Research Products
(24 results)