2011 Fiscal Year Annual Research Report
全電子収量軟X線吸収分光法による定量分析の基盤技術開発
Project/Area Number |
23360291
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
村松 康司 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50343918)
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Keywords | 量子ビーム / 解析•評価 / 複合材料・物性材料・物性 / ナノ材料 / 放射光 / 分析技術 / 炭素材料材料 |
Research Abstract |
放射光軟X線吸収分光法による炭素材料の定量分析技術の開発を目的として,具体的には,(1)非晶質炭素におけるsp2/sp3炭素定量と,(2)ヘテロ元素が加わった炭素材料におけるヘテロ元素の定量分析技術開発を進めてきた。(1)については,不飽和脂肪族化合物を対象としてジカルボン酸の全電子収量軟X線吸収測定を行い,その結果,sp2/sp3炭素が化学結合して存在するこのような系では両者の全電子収量が等しいことを確認した。これは,CK端XANESのσピークに対するπピークの相対高がsp2炭素の存在量に比例することを意味する。また,CK端XANESの理論解析を行うため,第一原理計算ソフトウエアCASTEPを導入し,sp2/sp3炭素から構成される様々な有機化合物のXANESをシミューレションできる環境を整えた。(2)については,酸素含有炭素におけるO/C定量の適用範囲を確認するため,表面酸化が問題となる炭素膜材料の分析を行った。具体的には,姫路城いぶし瓦の劣化状態分析に本法を適用し,風化による酸化反応の促進を見出した。これにより,実材料のO/C定量に放射光軟X線吸収分光法が利用できることを実証できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
sp2/sp3炭素定量技術の開発について,sp2/sp3炭素を分子内にもつ系に対する全電子収量比を求めるため,ジカルボン酸を用いて放射光実験を行い,分子内sp2/sp3炭素の全電子収量は等しいことを明らかにした。O/C定量技術については,実材料を用いてこの定量法の有効性を確認した。さらに,理論解析用のバンド計算用ソフトウエアCASTEPを導入し,sp2/sp3炭素ごとの軟X線吸収スペクトルのシミュレーション技術開発に取組んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,窒素含有炭素材料を対象としたN/C定量技術の開発に取組む。さらに,このようなヘテロ原子を含む実材料への分析応用を一層すすめる。また,sp2/sp3炭素の定量技術開発のため,分子構造が既知な様々な有機化合物のXANESを測定し,CASTEPによる理論解析を進める。
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