2012 Fiscal Year Annual Research Report
全電子収量軟X線吸収分光法による定量分析の基盤技術開発
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23360291
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
村松 康司 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50343918)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 量子ビーム / 解析•評価 / 複合材料・物性 / ナノ材料 / 放射光 / 分析技術 / 炭素材料 |
Research Abstract |
放射光軟X線吸収分光法による炭素材料の定量分析技術の開発を目的として,具体的には,(1)非晶質炭素におけるsp2/sp3炭素定量と,(2)ヘテロ元素が加わった炭素材料におけるヘテロ元素の定量分析技術開発を進めてきた。(1)については,アルキル置換芳香族化合物と不飽和脂肪族化合物を対象とした全電子収量軟X線吸収測定を行い,その結果,sp2/sp3炭素が化学結合して存在する分子系では,両者の全電子収量が等しいことを確認した。これは,CK端XANESのσピークに対するπピークの相対高がsp2炭素の存在量に比例することを意味する。したがって,このような分子系とみなせる非晶質炭素であれば,全電子収量軟X線吸収測定からsp2/sp3炭素定量ができることを明らかにした。ただし,分子骨格によりπピークの形状は変化することが多変量解析から判明したため,πピーク形状と定量情報との相関を明らかにする必要を指摘した。(2)については,窒素に注目して様々な窒素置換基をもつ芳香族化合物(約30種類)の軟X線吸収スペクトルを測定し,CK端に対するNK端の吸収ピーク強度から窒素定量が可能であることを示した。また,分子軌道計算を用いた系統的なスペクトル形状の理論解析から,窒素の指紋分析も可能であることを示した。つまり,全電子収量軟X線吸収分光法を利用して窒素含有炭素材料の窒素の定量・状態分析技術を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
窒素含有炭素材料を対象としたN/C定量技術を確立し,論文発表まで達成した。さらに,sp2/sp3を分子内にもつ系に対するsp2/sp3炭素定量技術については,アルキル基をもつ芳香族化合物を用いて放射光実験を行い,分子内sp2/sp3炭素の全電子収量比は等しいことを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに,酸素含有炭素および窒素含有炭素に対して,それぞれO/C定量とN/C定量の基盤技術を開発した。今後は,酸素と窒素の両方を含む炭素に対して本技術が適用できるか否かを判断する実験・解析を進める。さらに, 分子系とみなせる炭素材料では,sp2/sp3炭素の全電子収量比が等しいことが判明したので,これを論文化するとともに,理論計算によるシミュレーションで解析し,本技術の正当性を確認する。
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