2011 Fiscal Year Annual Research Report
マンガン酸化物における新奇な電場誘起ドメインスイッチング現象の機構解明
Project/Area Number |
23360295
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
村上 恭和 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (30281992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
進藤 大輔 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (20154396)
赤瀬 善太郎 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (90372317)
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Keywords | 電子顕微鏡 / 相変態 / Mn酸化物 / V酸化物 / 電荷・軌道整列 / 磁区 / ドメインエンジニアリング / 界面構造 |
Research Abstract |
【研究の目的、研究実施計画】 電荷・軌道整列ドメインの構造を電流/電圧で操作するという新奇なドメインスイッチング現象のメカニズムを、独自の電子顕微鏡観察技術により明らかにする。スイッチング現象を誘発する主要な機構を解明するとともに、電荷・軌道整列相の核生成・成長に及ぼす電場効果や、ドメイン界面のモビリティに関わるその場観察実験を行い、スイッチング現象の制御と工学的応用展開に向けた基軸的性質の理解を図る。 【平成23年度の研究成果】 (1)ドメインスイッチング現象の観察技術の開発:設備備品として購入した高感度CCDカメラを、オメガ型エネルギーフィルタを搭載した200kV透過電子顕微鏡に搭載した。本研究では、微弱な散漫散乱を利用した暗視野像の観察が重要な実験手段となる。これまで暗視野像の取得には数秒の露光時間が必要で、冷却過程の動的観察を行うことは困難であった。高感度カメラの導入により、ドメインの生成過程等を動画レベルで観察できるようになった。その結果、ミクロンスケールの電荷・軌道整列ドメインの内部に、数百nmオーダーのサブドメインが階層的に生じることが確認された。このサブドメインが、印加電場の下で移動する電荷・軌道整列ドメインの界面をイビツな形態にしていることがわかった。 (2)軌道整列状態で観察される磁気的ドメインの異常:軌道整列ドメインの観察対象としてMn-V-O酸化物を観察したところ、その磁気構造(磁気的ドメインの状態)が、圧力に対して敏感に反応するという現象を見出した。本研究の主要課題、即ち外場による新奇なドメイン構造制御に関わる成果として、次年度も引き続き研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するためには、電荷・軌道整列ドメインの複雑な内部組織やその生成過程を詳細に評価できる顕微鏡技術の構築が必要である。初年度の大きな課題であった本件は、予定通りに達成することができた。薄膜化した試料片にサブミクロンサイズの配線を施すという実験は、高度な技術開発を伴うことから次年度も引き続き取り組む結果となったが、基礎実験の過程で、前頁で述べた磁気的ドメインの圧力効果を新発見するなど、予想外の成果もあった。これらをふまえて、研究はおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
薄片状試料への電極設置については、集束イオンビーム装置を利用した基礎実験を次年度も引き続き行う。技術的な問題点は、薄片化した試料に対する圧力の負荷、イオンビーム加工に伴うデポジションで回路上の絶縁部分にリークが生じる点の二つである。後者については、加速電圧の低減等により問題の克服を図る。前者に関しては、結果的に圧力による磁性のコントロールという電子顕微鏡観察に端を発する新現象の発見を導いたものの、電顕内での電圧印加技術としては引き続き手法・プロセスの最適化を進める予定である。
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Research Products
(12 results)