2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23360296
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
丸山 公一 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90108465)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 純也 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (60613031)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 耐熱材料 / 高クロム鋼 / クリープ変形 / クリープ破壊 / 組織劣化 / 損傷 / 寿命評価 / 長寿命化 |
Research Abstract |
本研究は,高クロムフェライト耐熱鋼を対象とし,1)長時間強度評価の高精度化,および2)高温クリープ損傷プロセスの解明を目的とする。平成24年度は次の研究成果を得た。 1) クリープ曲線データの改良Ω法解析: この研究は,進行中のクリープ曲線から得た時間t-ひずみεデータを解析し破断時間を推定する手法の開発を目的としている。次の構成式に基づいて,クリープ曲線を解析した。 ε = εo + A ln(1 + αt) - B ln(1 - βt) ここで,εo, A, α, B, βはクリープ曲線フィッティングで決める材料定数である。種々の温度,応力で得たクリープ曲線の解析から,各材料定数を温度,応力の関数としてデータベース化した。このβを使うと,次の予測破断時間tr*を評価できる。 tr* = 1/β tr*は実測破断時間の0.8~0.9倍の値であることが分かった。 2) 長時間損傷プロセスの定量化: この項目は,ひずみ誘起回復と熱的回復が同時に起きる長時間域での回復挙動を,各素過程の解析で得た情報に基づいて,定量予測できるようにすることを目的とする。時効による亜結晶粒粗大化量はM23C6粒子間隔の1.3乗に比例することが分かった。また,次項のようにクリープが粒子間隔の増加を支援することを考慮すれば,長時間クリープ中の亜結晶粗大化量が定量的に予測できることを明らかにした。 3) 変形に支援された析出粒子成長: 析出物の凝集がクリープ変形に支援されることを,種々のクリープ試験条件で確認した。そして,クリープ中のM23C6粒子間隔の増加量は,同じ時間単純時効した時の粒子間隔増加量に比例すること,ただし比例係数は試験条件依存性を持つことが明らかになった。この試験条件依存性については,次年度継続して研究する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,高クロムフェライト耐熱鋼を対象とし,1)長時間強度評価の高精度化,および2)高温クリープ損傷プロセスの解明を目的として,研究を行ってきた。23年度には,(1)主たる組織損傷が亜結晶粗大化であることを特定し,短時間クリープではひずみ誘起の粗大化のみであるのに対して,長時間クリープでは熱的回復による亜結晶粗大化が加わることを明らかにした。また,(3)この損傷プロセスの変化に対応して,破断時間の温度依存性が変化することも分かった。そして,(4)同じ損傷プロセス領域内のデータのみを使えば,長時間クリープ寿命を高精度評価できることも立証した。 24年度には,(1)進行中のクリープ曲線の解析から,その材料のその条件での破断時間を高精度推定する手法を提案した。また,(2)クリープ変形がM23C6粒子の凝集を支援すること,(3)このクリープ支援効果を考慮すれば,ひずみ誘起と熱的回復という2つの素過程に関する情報から長時間域での損傷プロセスを予測できることを明らかにした。 以上のように,目的達成に向けて,順調に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年である25年度は,次の2つを研究テーマとする。(1)組織損傷の非破壊評価に基づく寿命評価。(2)長時間クリープ中での粒子オストワルド成長の定量化。これまでの成果に(1)の成果を加えて,クリープ破断データ解析,クリープ曲線解析と損傷の非破壊評価という3つの手法による破断寿命評価を可能にする。(2)の成果を得ると,長時間クリープ中での組織損傷プロセスを定量的に予測できるようになる。これらの成果を寿命評価学へ展開することも検討する。
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