2012 Fiscal Year Annual Research Report
生体医療用コバルト合金における粒界からのイプシロン-マルテンサイト形成機構の解明
Project/Area Number |
23360299
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小泉 雄一郎 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10322174)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 晶彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (00197617)
松本 洋明 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (40372312)
李 云平 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (80546862)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | バイオマテリアル / Co-Cr-Mo合金 / 双晶 / 界面 / 相変態 / マルテンサイト / フェーズフィールド法偏析 / 偏析 |
Research Abstract |
人工関節材料として重要なCo-Cr-Mo合金の力学特性を支配するε-マルテンサイト形成に対する粒界性格の影響を解明するため、種々の方位関係の粒界を含む粗大粒多結晶を作製し、その変形におけるε-マルテンサイト形成と粒界を挟む結晶の方位関係に注目して調べた。焼鈍双晶界面(ATB)に平行なすべりのシュミット因子(SF)が最大となる条件で変形した場合にショックレー部分転位の活動が生じる側の結晶内部にのみATBに平行なすべりが生じATB近傍で優先的にSIMTが発現することを昨年度見出した。今年度は、ATBに平行でないすべりのSFが最大の場合でもATBに平行なすべりが優先的に生じ、ATBに沿ってSIMTが発現すること、ATBの存在がすべりの選択性とSIMT発現に影響することを見出した。また、ATBに平行なすべりを起点としてSFの大きなすべりが生じる等、SIMTに由来する特徴的なすべりの伝播挙動を確認した。さらにSIMTと、金属インプラントの破損の第一要因である疲労破壊との関係に注目し、CCMN合金の疲労変形・破壊挙動についても調査した。その結果、疲労変形後の表面起伏にはすべり変形が非可逆性を反映した階段状の特殊な表面起伏が見られた。この様なすべりの非可逆性は準安定γ相中のショックレー部分転位の非可逆的運動から解釈される。一方、SIMTが集中してε相が厚く生成した領域ではγ相に比べ非常に鋭い表面起伏を形成することがわかった。これは、この様な鋭い表面起伏は疲亀裂発生源となり、最終的な疲労破壊に繋がることを明らかにした。その他、摩擦試験、ε-単相化したCCM合金の塑性変形挙動の調査、界面偏析のフェーズフィールド計算についても行い、本合金の耐摩耗性を向上し、高信頼性の人工関節を実現するための指針を得るとともに、鉄鋼材料等の特性改善にも有用な、結晶塑性学的に新規で重要な知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では双結晶を作製して、結晶方位関係の異なる粒界におけるひずみ誘起マルテンサイトについて、一つ一つ調べて行くことを考えていたが、種々の粒界を含む多結晶を用いて実験することにより、効率的に研究を進めることができた。従来、このような多結晶を用いた実験では、現象の解析が困難であったが、最近の広報散乱電子線回折法やそのさらに先進的手法であるWilkinson法を巧みに活用することにより、1つの試験片を用いた実験で、種々の結晶粒界におけるすべりの発現やひずみ誘起マルテンサイトの発現と、結晶方位ならびに界面方位との関係を解析することが可能となった。このような理由により、当初の計画よりもかなり効率良く、粒界とひずみ誘起マルテンサイトの発現との関係を明きらかにすることができた。また、本研究を共に実施してきた学生が優秀でありかる精力的に実験を行ったことも、研究を計画以上に推進することができた理由の1つである。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究で明きらかとした、ε-マルテンサイトの形成をともなうすべり変形挙動が結晶荷重軸に依存性、その粒内変形の結晶方位依存性、粒界近傍のすべりの、粒界方位依存性、 特に、再結晶組織中に多く存在する双晶界面近傍に於ける粒内のシュミット因子からは予想されないすべりの発現、粒界の両側にある結晶内部のすべりによるひずみの不連続 性に由来した内部応力について、破壊との関係に注目して、原子レベルで 理解するする。そのため界面転位および粒界構造の詳細な TEM 観察や局所組成解析・計算機シミュレーションを行う。 具体的な内容は以下のとおり、 (1)界面近傍の透過電子顕微鏡(TEM)観察:(1a) 弱ビーム法等の回折理論を駆使し、界面及び界面近傍の 転位組織や積層欠陥を詳細に観察する。(1b) 界面方位関係や変形条件による転位組織や積層欠陥の 違いを、EBSD による方位分布やひずみ分布の測定 結果と 照らして、界面でのε-マルテンサイト形成に対する、 すべりの連続性や格子欠陥の蓄積の影響を解明 する。 (2)界面構造の高分解能電子顕微鏡(HREM)観察:(2a) HREM により変形前の界面構造を原子レベルで観察する。(2b) 種々のひずみ量まで変形した試料の界面構造を観察し、界面構造とε-マルテンサイト形成との相関を調べ る。(2c) ε-マルテンサイトの先進界面とその近傍の格子像観察によりε-相の成長への転位の役割を調べる。 (3)界面偏析の影響の検証:(3a) Phase-Field シミュレーションにより偏析元素と偏析量を熱力学と速度論の両方の立場から予測する。 (3b) STEM-EDS及びEELSによる半定量的分析と3D-アトムプローブによる定量分析を行う。
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Research Products
(17 results)