Research Abstract |
本研究は,鍛造TiAl基合金を世界に先駆けて実用化する上でクリアーすべき靭性の向上を組織設計の観点から達成することを目的に,本年度はき裂の伝播経路と組織との関係を調べ,以下のことを見出した (1)き裂伝播に及ぼすラメラ組織およびそのラメラ方位の影響 Ti-48Al及びTi-48Al-8Nb合金を一方向凝固し,それぞれα_2/γ2相フルラメラ単結晶,及び,γ/γフルラメラ単結晶を作成して,荷重軸に対して特定の方位を持った試験片を作成して,SEM内3点曲げ試験のその場観察を行った.その結果,α_2板の有無に依らず,き裂の発生は,荷重軸に対するラメラ面の傾斜角(θ)の増加により抑制される。一方,き裂の伝播抵抗は,荷重に対するラメラ面の回転角(λ)が45℃近傍で最も高くなる。特に,λの増加はき裂発生後も加工効果による荷重の増大をもたらす.したがって,靭性の向上にはλの制御が重要である. (2)き裂伝播に及ぼす残留β相の影響 熱間鍛造したTi-42Al-8V合金に,我々が構築した組織制御法を利用してほぼラメラ粒及びその粒界をβ-Ti相で覆った組織を意図的に作成し,(1)と同様のき裂進展のその場観察を行った.その結果,ラメラ粒界は,隣り合う粒のラメラ方位差が大きいほどき裂伝播の抑制に効果があるが,靭性は応力軸に対する傾斜角θが小さく,且つ,隣り合う粒の方位差が小さい粒界の頻度によって支配される.一方,粒界β相は塑性変形することを見出し,き裂の進展を抑制する効果を有する.したがって,ラメラの方位差が小さい粒界にβ相を存在させることは,鍛造TiAl基合金における優れた靭性向上機構になりうる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の最も難しい点は試料作りである.曲げ試験を行うための単結晶は自ら育成可能である.一方,熱間鍛造材は,インゴットの溶製と鍛造を発注する必要がある.しかし,それでは自由度が制限されるため,当初本年度の予算で組織観察・解析装置を購入する予定であったが,計画を変更して,大型の圧延機を購入した.したがって,外部発注せず,熱間圧延によってその場観察用の試料を得ることが可能となった.
|
Strategy for Future Research Activity |
単結晶を用いたラメラ方位の靭性及ぼす効果については,θとλが45°以上となる単結晶の育成を行う.また,バイクリスタル試料を用いて,隣り合うラメラ方位が異なる試料を作成し,結晶粒界のき裂伝播抵抗の効果を定量的に評価する. 組織制御した多結晶試料については,方位解析によって粒界b相の効果を定量的に評価する.また,曲げ試験日加えて,引張り試験により,き裂先端での応力集中を定量的に解析する.
|