2012 Fiscal Year Annual Research Report
その場観察と計算科学を駆使したナノポーラス金属の孔径制御ダイナミクス解明
Project/Area Number |
23360305
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
馬渕 守 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (00358061)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 裕美 豊橋技術科学大学, 学内共同利用施設等, 教授 (00319500)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ナノ材料 / 多孔質 / 金属 |
Research Abstract |
昨年度検討した透過電子顕微鏡 (TEM) 観察用ナノポーラス金属の創製プロセスをより詳細に検討した。スパッタリングにより厚さ100 nm以下のAu-Ag、Pd-Co、Ni-Mn等のナノポーラス金属の出発合金の薄膜を形成させ、これを脱合金化処理(酸などによる選択的エッチング)に供した。これらの試料について、まずは利便性の観点から走査電子顕微鏡 (SEM) で観察を行い、ナノポーラス構造が(薄膜でない)バルク状のナノポーラスAuと同様に形成されていること、また脱合金化処理の条件調製によって孔径を制御できることがわかった。 また、ナノポーラス金属の表面積の効果を別の方法で顕在化することを目的に、ナノポーラスAu, Pd, Ni試料およびバルクAu, Pd, Ni試料を有機色素(メチルオレンジ)の水溶液中に浸漬し、その脱色速度を調査した。バルクAu, Pd, Niを浸漬した場合には全く脱色されなかったが、ナノポーラスAu, Pd, Niについては脱色されることを確認した。ナノポーラス金属による脱色処理後溶液を詳細分析した結果、メチルオレンジのアゾ結合が切断されていることがわかった。また、表面積の異なるナノポーラスAuを浸漬した実験から、メチルオレンジの分解速度が表面積と必ずしも比例しないことがわかった。 これらの結果と昨年度実施した第一原理計算・分子動力学計算の結果を考慮すると、表面格子ひずみあるいは残留元素などナノポーラス金属の表面特異性が、脱色触媒としての特性にクリティカルな影響を及ぼすことを意味する。すなわち、ナノポーラス金属の表面で起こる特性を最大化する際に、いたずらに孔径を縮小して表面積を拡大するだけでは不十分であり、表面格子ひずみ・残留元素等の状態の制御が重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノポーラス金属の熱処理時の孔径粗大化過程を追跡するのは最終年度に回し、そのぶんのエフォートを脱色触媒特性の調査に充てた。ナノポーラス金属の応用を考える上で表面積よりも表面特異性(表面格子ひずみ等)の効果が重要であることを明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、ナノポーラス金属の熱処理時の孔径粗大化過程をその場電子顕微鏡観察する。
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