2011 Fiscal Year Annual Research Report
マルチスケールその場観察によるFe基化合物の新規な超弾性挙動の解明
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23360308
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
安田 弘行 大阪大学, 大学院・工学研究科, 准教授 (60294021)
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Keywords | 超弾性 / 転位 / 逆位相境界 / 形状記憶合金 / 金属間化合物 |
Research Abstract |
Fe_3Al、Fe_3GaといったFe基化合物の超弾性挙動について、透過型電子顕微鏡(TEMやSEM-EBSD法といったその場観察法を駆使して、調査を行った。とりわけ、本年度は、Fe_3Al単結晶ならびに多結晶の超弾性挙動をSEM-EBSD法でその場観察することに重点を置いた。その結果、Fe_3Al単結晶では、2つの異なる荷重軸方位で変形してもマルテンサイト変態や双晶変形は生じず、転位の運動のみで変形が生じ、歪量が5%以下である場合、除荷時にほぼ完全な形状回復が生じることが明らかとなった。また、多結晶試料についても同様に調査を行ったところ、結晶粒界にて転位による変形が局在化する様子が観察され、特に微細粒の試料ほどその傾向は強い。このため、微細粒試料は除荷後も歪の回復が困難であった。一方、粒径がミリメートルオーダーの粗大粒試料では、結晶粒界のごく近傍では歪回復が生じないが、それ以外の場所では十分な形状回復が生じた。この知見を活かして、再結晶集合組織を利用した組織制御を行ったところ、多結晶試料であっても巨大な歪回復を生じさせることに成功した。また、Fe_3Al単結晶中の転位運動をTEMにてその場観察したところ、逆位相境界(APB)を引きずった1/4<111>超部分転位の応力負荷時・除荷時における運動を捉えることに成功した。例えば、1/4<111>超部分転位は負荷・除荷に伴って単に往復運動しているわけではなく、除荷中に新たな転位が増殖されたり、ある転位の引きずるAPBを他の転位が消去する様子が観察された。以上のように、Fe_3Al単結晶の超弾性につながる転位運動は従来考えられていたモデルよりもより複雑であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
各種その場観察法によるFe基化合物の超弾性挙動の解明が本課題の主目的であったが、当初の予定通り、TEM、SEM-EBSD法を利用したその場観察実験で、超弾性挙動に関する新規知見が得られたとともに、その知見を活かして、組織制御によりFe_3Al多結晶の超弾性特性を飛躍的に改善することに成功している。また、得られた知見を、ICOMAT2011をはじめとする国際会議で発表し、大きな反響を頂いた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は、震災の影響で使用不能となっていたJ-PARC(茨城県東海村)が復旧し、再び施設利用が可能となるため、その中性子回折装置を用いたその場観察実験を実施し、超弾性変形時の結晶内部の構造、方位をその場観察することで、超弾性挙動の解明に繋げる。また、Fe_3Al合金よりもより複雑な挙動を示すFe3Ga合金の超弾性についてより重点的に調査を行う予定である。
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