2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23360311
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
木田 徹也 九州大学, 総合理工学研究院, 准教授 (70363421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島ノ江 憲剛 九州大学, 大学院・総合理工学研究院, 教授 (10274531)
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Keywords | 混合導電体 / ペロブスカイト / 酸素透過 / BaFeO3 |
Research Abstract |
酸素富化空気は省エネルギー、排ガス量の削減などの点で注目されており、医療分野や廃水処理といった幅広い分野でもその重要性が高まっている。混合導電性を示すペロブスカイト型酸化物を用いた空気からの酸素分離は、電極や外部回路を必要とせず、濃度勾配のみで簡便に分離できるため、省エネルギー性が高く環境に優しい酸素富化技術として期待されている。しかしこれまで使用されてきたCo系ペロブスカイト膜は化学的安定性に劣り、また酸素透過能も低いという問題があった。そこで本研究では、申請者らが開発した化学的安定性に優れたFeベースの材料であるBa_<0.95>La_<0.05>FeO_<3-delta>を用いて、より実用性に優れる酸素透過膜の開発を目指した。 これまでに、酸素透過膜の表面構造によってその酸素透過能が大きく影響を受けるこどが明らかにされている。そこで本年度においては、その効果を詳しく調べるため、酸素透過膜にミクロンサイズの粒子から成る酸素放出層を取り付け、その際の透過速度を詳細に調べた。酸素放出層の膜厚と多孔度を制御し、その最適化を図ることによって、透過速度の改善のための知見を得ることを図った。 膜と同組成のBa_<0.95>La_<0.05>FeO_<3-delta>を用いて、酸素放出層を膜に積層させたところ、大きく酸素透過速度が向上することを見出した。さらに、透過速度は膜厚にも依存することがわかった。次に、新しい酸素放出層用の材料を探索したところ、La1-xSrxFeO3-deltaを透過膜に積層することでさらに酸素透過速度が向上することを見出した。透過速度はまた酸素放出層の組成によっても影響を受け、Sr置換量が10%の場合に最も効果的であった。また、酸素放出層の仮焼成温度を変化させた場合の透過量を測定したところ、仮焼成温度を低くして、より多孔度を上げることでも透過能が改善できることがわかった。以上のように、酸素透過膜表面の微細構造、粒子径、組成を制御することで、透過速度がさらに向上できる可能性を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とした新しい酸素放出層材料としてLa1-xSrxFeO3-deltaを見出しており、この材料を基本とすることで更なる酸素透過速度の改善が可能であるという知見を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の基本方策としては、酸素透過に影響する基礎的要因を明らかにして、その酸素透過性能の大幅な向上を目指すことであり、引き続き、膜表面における酸素の反応速度と膜の微細構造を制御することで、如何に透過速度が改善できるかについて調べることを計画している。さらに、同位体酸素を用いたSIMS(二次イオン質量分析計)測定によって酸素透過膜内における酸素の拡散プロセスを詳細に調べ、膜の構造と拡散速度との相関を明らかにすることを試みる。
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