2012 Fiscal Year Annual Research Report
単結晶アルミニウムを用いた摩擦関与接合現象の機構解明
Project/Area Number |
23360324
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
柴柳 敏哉 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (10187411)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 誠 大阪大学, 接合科学研究所, 講師 (10294133)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 摩擦攪拌スポット接合 / 透明流体 / 非ニュートン流体 / PIV |
Research Abstract |
摩擦攪拌スポット接合における塑性流動現象を透明流体を用いてシミュレートする技術を確立した。さらに、それを用いて接合ツール周囲の流動を観察し、金属材料内で実際に生ずる攪拌組織形成過程と類似の様相を呈することを確認した。 本研究では摩擦関与現象を利用した接合における接合機構を金属材料の高温変形の観点で究明することを主題としているが、塑性変形モードを知ることが極めて重要なポイントになる。これまでに単結晶アルミニウムを用いた研究で複数の変形モードの競合関係であることまでは突き止めてきたが、本年度の可視化研究により材料内のどの場所でどのタイプの塑性変形が主になるのかを推定する手がかりを得た。 金属材料は降伏応力を持つのでニュートン流体を作動流体として用いることは論理的矛盾がある。したがって、非ニュートン流体の中から最適な粘性ならびに粘性の温度依存性を有する物質を探索し、2,3の候補材料に絞り込んで粘性測定、実際の接合装置を用いた流動観察予備実験を経て最終的に一つの物質にたどり着いた。 流動の可視化にあたり、微細粒子を懸濁する手法を採用した。この懸濁粒子を含んだ作動流体にスリット光を照射し、ビデオカメラで流動状況を観察したが、撮影映像から粒子速度場解析法(PIV法)による画像計測を施して流動状況の定量解析も行ない、攪拌部(いわゆるSZ)内の流動速度がその周囲のものよりも相対的に小さいことを見出した。 以上の結果は摩擦攪拌スポット接合の接合ツール形状の最適化へ結びつく基礎知見として有用であり、これらの観察結果をベースにして物理モデルを構築していくことが最終年度の課題となる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで見過ごされてきた塑性流動の動的観察を可能にした。さらに、速度場の解析手法の適用により、定量的な流動イメージをつかむことに成功し、この結果は接合中の欠陥発生挙動の機構解明は言うまでも無く、変形モードの特定へと具体的に結びつく。 本研究では、単結晶を用いる変形モード解析手法がすでに確立されており、詳細な実験データの解析結果が蓄積されてきている。これらの知見と本年度得られた流動解析結果を照合し、より正確な塑性流動の描像を手にすることで摩擦現象が関与する接合において何が支配的な要因として接合界面組織形成に寄与するのかが浮かび上がってくる。 最も難しいと思われた可視化技術が確立でき、本研究の山場を超えたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
3年間の研究期間の2年間で新しい解析手法が確立し、正確なデータが得られるようになったので、本研究の主題である変形機構解明に向けた全ての実験が一本の基軸の上で議論できるようになった。 今後は、単結晶アルミニウムならびに他の金属材料を用いた摩擦圧接、摩擦攪拌スポット接合における塑性流動の観察を繰り返し、金属材料の力学物性、接合条件、接合ツール形状がそれぞれ接合部組織形成過程に及ぼす影響を整理・考察し、より一般的に適用できる基本原理を明らかにしていくことになる。 また、可視化技術を移動型の摩擦攪拌接合に拡大適用し、より複雑な塑性流動の本質を究明することになる。 最終的には、接合機構に依拠した接合ツール形状の最適化指針を確立することになる。これにより産業界へ科学的根拠を持った技術を還元することになる。
|
Research Products
(7 results)