2012 Fiscal Year Annual Research Report
限界過冷却融体の動的密度揺らぎの観察とアモルファス合金形成機構の解明
Project/Area Number |
23360335
|
Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
正木 匡彦 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (00360719)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 章敏 学習院大学, 理学部, 助教 (10348500)
宗尻 修治 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (90353119)
岡田 純平 独立行政法人宇宙航空研究開発機構, その他部局等, 助教 (90373282)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 金属生産工学 / 過冷却液体 / 浮遊 / 液体構造 / 放射港 / ゆらぎ |
Research Abstract |
本研究は、過冷却した金属液体内の原子配置やダイナミクスの解明を目てことしている。本年度は三年計画の二年目であり、濃度揺らぎを自発的に発生する合金系の液体構造解析実験および液体構造解析用静電浮遊装置の改良を行った。また、計算機シミュレーションによる原子ダイナミクスの研究に使用する計算機を導入した。 Bi-Ga合金は二液相の臨界点を有し、その臨界点近傍では濃度揺らぎを自発的発生する。この系の臨界点近傍のX線構造解析を行い、濃度揺らぎの観察を試みた。実験にはスプリング8のBL04B2とガスジェット浮遊装置を用い、ビームラインに設置された炭酸ガスレーザーを用いて試料の溶融を行った。X線散乱強度の角度依存性を二軸のゴニオメータと半導体検出器を用いて測定した。小角領域において、濃度揺らぎに起因するとみられる散乱強度の増加が認められた。また広角領域までの静的構造因子を得ることができた。 今回改良を加えた液体構造解析用静電浮遊装置は、スプリング8のBL35高分解能X線非弾性散乱装置に使用するための装置であり、大型のターボ分子ポンプを付加することにより従来よりもひとけた高い高真空を得ることができるようになった。静電浮遊炉において高真空条件は過冷却の安定保持や大過冷却への到達を容易にすることから、本研究の目的の一つである極限過冷却液体への到達が可能なるものと期待できる。 本年度に導入した計算機は、大規模古典分子動力学計算や第一原理計算に使用した。原子埋め込み法などを用いた古典分子動力学計算では、NPTシミュレーションにおいて実験のモル体積をよく再現することが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、三年計画の二年目であり、揺らぎを伴う金属液体の構造解析と既存の装置の改良、シミュレーション用計算機の導入を計画した。計画は、以下に述べるように、実験にかかわる部分については、ほぼ予定に沿って進捗している。モデル化へ向けた理論構築については、来年度前半において研究者相互の情報交換を活発にし、それを加速したい。 揺らぎを伴う金属液体の構造解析については、Bi-Ga合金の構造解析を共同研究者とともに行い、静的構造因子と小角領域の散乱強度の増大を観察することができた。詳しい解析は現在進捗中であるが、液体金属内の揺らぎに対する新たな知見を得るられる見込みである。 既存の装置の改良については、本研究費により大型のターボ分子ポンプを導入し、真空排気時間の短縮と高真空化を達成した。従来の装置では、排気時間に6時間程度を要しており放射光実験の妨げとなっていたが、改良により1時間程度で実験が可能となり、実験の大幅な効率化ができるようになった。また、最高到達真空度についても、従来よりも一桁以上の高真空が得られるようになり、従来到達不可能であった大過冷却の実験が可能となった。 理論構築については、全体の計画に沿って、本年度は原子ダイナミクスの理解のための計算機を導入し、大規模古典分子動力学計算や第一原理分子動力学計算を行えるようにした。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は、ほぼ計画に沿って進捗しており、来年度の計画の大幅な変更はない。来年度については、本年度に改修を行った構造解析用静電浮遊装置をスプリング8の高分解の非弾性X線散乱装置に設置し、大過冷させた液体シリコンの動的構造因子の測定を試みる。合金系やセラミックスなど複数の原子が存在する系では、X線散乱以外の方法を併用した部分構造因子の測定が必要となる。来年度については、その一つとして実験室系のXAFS装置の整備を行う。またJPARKの中性子散乱実験の可能性についても検討する。理論構築については、本年度に導入した計算機を用いて過冷却状態の原子ダイナミクスを大規模古典MDや第一原理MDを用いて解析する。
|
Research Products
(3 results)