Research Abstract |
数個から数百個の原子で構成されている1-2ナノメートル程度の金属ナノ粒子は"金属クラスター"と呼ばれており,従来の3nm以上の"金属ナノ粒子"とは異なる性質を示す興味深い物質群である。金属クラスターの液中合成では,金属クラスターの生成と安定化のため,通常,金属との相互作用が強いチオール化合物などの有機保護剤が添加されるが,金属クラスターの表面利用が低減される場合も考えられる。そこで,本研究は,"チオール化合物などの保護剤を使用せずに金属サブナノクラスターを溶液中で金属クラスターを液中合成する方法を開発することを目的としている。本年度は,N,N-ジメチルホルムアミド(DMF),N,N-ジエチルホルムアミド(DEF),N,N-ジブチルホルムアミド(DBF)溶媒を還元剤&保護剤とすることで,チオール化合物などの保護剤を添加せずとも,金クラスターを液中合成できることを見出した。これら金クラスターは溶媒で保護されており,その触媒特性を,4-ニトロフェノール(4-NP)から4-アミノフェノールへの還元反応をモデル触媒に用いて評価した。その結果,溶媒保護金クラスターの触媒活性は溶媒保護層の種類に強く依存し,特に,DMF溶媒保護金クラスターで最も高い触媒活性が観測された。加えて,DMF溶媒保護金クラスター触媒において,反応開始までの時間(誘導期)が存在していることが見出され,これが金クラスターを保護するDMF保護層の吸着状態と関係していることが明らかとなった。更に,金属クラスターの構造を決める新規なナノクラスター質量分析システムとして,大気圧でのイオン化法であるレーザースプレーイオン化(LSI)質量分析装置を試作し,モデルペプチドやタンパク質等を検出できることにより,その動作確認を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,レアメタル触媒の高度利用に向けた保護剤フリーで金・白金などの貴金属クラスターの液中合成を実現することにあった。その中で,有機保護剤を添加しない金クラスターの液中合成が,N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)などのホルムアミド系溶媒を用いることで可能であることを見出すことができた。加えて,本合成法で合成された金クラスターが高い触媒活性を示すことも見出した。また,当初計画にあった金属クラスターの構造決定を行うための質量分析システムの試作にも成功し,基本性能の確認も行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で見出されたホルムアミド系溶媒を用いた金属クラスターの合成法を,金以外の金属種(Ni,Feなど)でも合成できるかどうかを検討する。そして,本手法で合成された金属クラスターの触媒特性を評価する。また,有機保護層の異なる有機保護金クラスターの合成,及び構成原子数を制御した有機保護金クラスターの合成も行う。これにより,触媒特性に大きな影響を与えると考えられる保護剤及び金クラスターの構成原子数の影響を明らかにする。 また,試作したレーザースプレーイオン化(LSD質量分析装置を用いて,金属クラスターの検出のための最適化条件を検討する。
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