2011 Fiscal Year Annual Research Report
光駆動性の生物学的レアメタル濃縮系の開発とメタロミクスによる金属動態の理解
Project/Area Number |
23360362
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
前田 勇 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (10252701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 美智子 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (90345182)
渡辺 昌規 広島国際学院大学, 工学部, 准教授 (20320020)
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Keywords | レアメタル / メタロミクス / 光合成 / 光合成細菌 / ICP |
Research Abstract |
産業的価値が高いレアメタル資源を従来技術で困難であった希薄水溶液から回収することが可能になれば、希少資源の再資源化の観点からその意義は大きい。本研究ではモリブデンやバナジウム、アンチモンといったレアメタルを、光合成系と生物濃縮系との共役により太陽光を主たるエネルギー源として利用し濃縮する技術を開発し、日本の産業基盤上脆弱なレアメタル供給源を補強することを目的とする。このために、平成23年度は3つの研究課題に取り組み以下の成果を得た。 (I)レアメタル濃縮能を強化した組換え光合成細菌育種を目的として、大腸菌のモリブデン結合タンパク質をコードするmodE、アンチモンへの結合能が期待され重金属耐性転写調節因子をコードする大腸菌のarsRあるいは黄色ブドウ球菌のcadC遺伝子を細胞に導入した菌株を育種した。今後はこれら組換え光合成細菌のレアメタル濃縮能についての評価を行う予定である。 (II)メタロミクスにより、光合成細菌野生株における金属動態の解明を試みた。光合成細菌野生株を、モリブデン蓄積が期待される選択的条件と通常の増殖条件で培養し、培地から細胞内への各金属元素の動態を測定可能な全ての元素種において明らかにした。その結果、増殖と連動して取り込まれる必須元素の動態と比較し、増殖と連動しない選択的な条件によりモリブデン濃縮が認められた。 (III)レアメタル濃縮細菌から高いエネルギー効率で大半の水を除くための手法を開発する。このために光合成細菌野生株の凝集体形成を、培養環境の変化そして増殖フェースに基づき詳細に解析した。その結果、最も大きく、かつ安定な細胞塊を形成する条件と回収時期を設定した。さらに凝集に関与する細胞外マトリクスの分子種について明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レアメタル濃縮能を強化した組換え光合成細菌育種、メタロミクスによる組換え菌株における金属動態の解明、および水相からの効率的なレアメタル回収法の開発の3つの課題について一定の成果を得ることができた。平成23年度については、特に野生株における金属動態の解明において、今後の組換え株を用いたメタロミクス解析において基盤となる技術的課題を克服することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
より高い選択性と濃縮能を有する組換え光合成細菌株の育種に取り組む。光合成細菌宿主として、これまでの紅色非硫黄細菌に加えてフィラメント状シアノバクテリアを検討する。 レアメタル濃縮能を強化した光合成細菌の組換え株を用いて、平成23年度実施予定の野生株に対する分析と同様に水試料から細胞内への物質フローとキレート分子-金属複合体形成を測定可能な主要金属元素において明らかにする。得られた複数の組換え株の中から有望な株を選択する際には主としてICP-発光分析装置を用いた評価を行う。その後に選抜株を用いたより精度の高い解析をICP-MSにて行い、外来のレアメタル・キレート分子の生合成が主要金属元素の物質フローと、金属-生体分子間相互作用にどのような影響を与えるのかを明らかにする。 平成24年度には紅色非硫黄細菌の凝集性に関わる遺伝子の解明を凝集性消失株の解析により行う。
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Research Products
(1 results)