2012 Fiscal Year Annual Research Report
プローブ分子を要しないリアルタイム細胞応答観察法の開発とバイオセンシングへの応用
Project/Area Number |
23360365
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
篠原 寛明 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (60178887)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 薬物作用評価 / 非標識(ノンラベル) / 細胞センサ / 2次元SPR / バイオイメージング / デジタルホログラフィック顕微鏡 / 電界配向 / 生死判定 |
Research Abstract |
平成24年度は、以下のような成果を上げることができた。 ① 神経系及び内分泌系の株化動物細胞を細胞膜受容体に対するアゴニストやアンタゴニストで刺激した際の応答を2次元SPRで個々の細胞ごとに観察できることを示した。その応答強度や細胞の応答率から、蛍光試薬などのプローブを一切用いることなく、それらの薬物の迅速で簡便な検出、定量が可能であることを明らかにした。培養細胞を利用する迅速簡便な新規な薬物作用評価法、スクリーニング法として大きく期待できる。 ② また、上記の2次元SPRイメージングで可視化される薬物刺激に伴う細胞内反応としてプロテインキナーゼCなどの情報伝達にかかわるタンパク質の細胞膜近傍へのトランスロケーションに着目し、阻害剤共存下での応答観察結果の検討から、観察原理としてその可能性が極めて高いことを明らかできた。 ③ 平板電極間に長短比の大きな(楕円状の)分裂酵母の懸濁液を入れ、交流電界を印加した場合、高周波(5MHz以上)では生細胞は電界に平行に配向するが、死細胞は平行な配向を取れないことから、これも全く新規なプローブ分子を要しないシンプルな培養細胞の生死判定法となることを発明した(特許出願済)。また、種々の濃度の抗真菌薬を投与した際の細胞生存率と細胞の配向率との相関を明らかにし、培養細胞系での非標識の薬物作用評価法として応用できることを示した。 ④ さらに、デジタルホログラフィック顕微鏡を用いる動物細胞の精密な形態観察、特に細胞高さの簡便精密観測により受容体アゴニストの検出や定量に応用できる可能性を示した。この方法も全く新しい、しかもプローブ試薬を必要としない簡便な薬物作用評価法として期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で記したとおり、年度目標をほぼ達成できた。培養細胞に対する薬物作用を迅速、簡便に評価でき、その検出定量に有用な、2次元SPR法、デジタルホログラシック顕微鏡観察法、電界配向観察法の3つの新しい方法をほぼ確立することができた。またその観察原理の考察も行うことができた。今後どこまで応用できるか、その汎用性を検討する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、申請課題の最終年度として次のように研究を進め、これらの細胞応答観察法の広い有用性と将来性を示す。 ① さらに種々の系の株化動物細胞を用いて、PKCのトランスロケーションを引き起こす生理活性物質や薬物で刺激したときの細胞応答を2次元SPRでイメージングできることを示し、生体物質や薬物の迅速、簡便で高感度な細胞センシングの応用性を広げる。 ② 未分化状態の細胞とその分化後の細胞では、同じ薬物に対する応答が異なることに着目し、同じ薬物刺激に対する2次元SPR応答の変化を観察することによって、個々の細胞の分化状態を非侵襲に評価できるか検討する。 ③ 長短比の大きな酵母以外の微生物、動物細胞について、高周波域での電界配向により細胞の配向率と生存率との相関を検討し、標識の要らない生死判定法としての汎用性を示す。また、電気伝導度の高い通常培地中での電界配向による細胞の生死判定を実現し、実用性を高める。 ④ デジタルホログラフィック顕微鏡により、種々の培養動物細胞の薬物刺激時の形態 (細胞の厚みや幅)変化を観察し、非標識での薬物センシングへの広い応用性を示す。
|
Research Products
(8 results)