Research Abstract |
ロケットエンジンや高負荷なディーゼルエンジンなどのエンジンで現れる3MPa以上の超臨界状態において,(i)効率的な数値解析および実験により,流体における拡散混合過程と流れのダイナミクスを解明する,(ii)さらに,最新の高圧酸水素燃焼反応を数値解析に考慮することにより,部分的予混合・拡散混合過程が火炎のダイナミクス・保炎機構に及ぼす影響を解明する,を主な目的としている.本年度の研究の成果は以下の通りである. (1)RANS解析 これまで改良してきた前処理法を用いる3次元RANS流体解析コードを使用して解析を実施した.状態方程式は完全気体とし,乱流モデルはBaldwin-Lomaxモデルとした.後述する実験と同様の低速・高圧窒素噴流に対する解析を行い,噴流の構造が自己相似分布の理論解と一致することや噴流の拡散過程を明らかにした.また,前処理法を使用する解析では,同法を使用しない場合に比べて効率的に高精度な計算結果を得ることも確認した.そして,反応流体解析コードに前処理法を組み込むための定式化を行った.さらに,今後の超臨界燃焼解析に向けて,高精度解析手法であるWCNS法,化学反応の効率的な可能であるVODE法,高圧燃焼対応酸水素反応モデルであるUF-JAXAを使用した燃焼解析を実施した. (2)LES解析 これまでに作成してきた2次元および3次元LES流体解析コードを使用して,超臨界圧力条件下で解析を実施した.LESとしてはどちらもimplicit LESを用いた.状態方程式はSRK状態方程式である.2次元解析により,噴射密度比が噴流構造に与える影響や噴流の拡散過程を明らかにした.また,3次元解析により,噴射器出口直後では剪断層の平均速度分布に起因する不安定波が存在し,極低温流体の高密度領域終端よりも下流では,不安定波のペアリングによって生じる高密度塊の「千切れ」が混合に影響することを明らかにした.そして高密度塊の影響はRANSでは再現できず,LES解析の必要性が明らかになった. (3)実験解析 液体窒素を用いて極低温遷臨界および超臨界噴流の実験を実施した.噴射温度が疑臨界点以上の場合および,疑臨界温度以下からの噴射でも中心軸温度が疑臨界点を超えた領域では,半径方向温度分布は密度差のある理想気体ジェットと同様な自己相似分布で整理できることが分かった.また噴射温度が疑臨界点以下の場合,中心軸温度が疑臨界点を超える際に密度が急変する様子が見られた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数値解析および実験は,おおむね順調に進展している.特にRAS解析については,燃焼解析用の前処理法が定式化の段階であるが,燃焼解析の効率化に向けた手法を先取りして試行を行っている.
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き2ヶ月に一度のミーティングを行い,研究方法や研究結果の議論を行う事で本研究を加速する.また,昨年度までの実験では噴射条件のバラツキが大きく,疑臨界点付近の挙動を正確に把握することが難しかったため,噴射装置の再設計を行い,噴射温度をより厳密にコントロールして,詳細なデータを取得する.
|