2012 Fiscal Year Annual Research Report
総合的リスクを考慮したライフサイクル構造評価手法に関する研究
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23360383
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
川村 恭己 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (50262407)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 総合的リスク / 船舶工学 / ライフサイクル評価 / 構造最適化 |
Research Abstract |
平成24年度は、主として船舶に関する総合的(Holistic)なリスク評価手法とそれを用いた構造最適化手法の検討を行った。 まず第一に、ダブルハルタンカー(VLCC)を対象としたリスク評価に基づく構造最適化問題の検討を行った。リスク評価の内容としては、事故リスクや経済的リスクの評価に加えて、油の流出によるリスクの考え方を検討した。具体的には、海洋汚染防止条約内で規定されている油の流出量の算出手法を用いて、油流出量の推定量を行い、それを元にリスクを評価した。次に、環境インパクトの影響として、CO2の排出リスクの検討を行った。CO2排出リスクの評価では、船舶の製造プロセスにおけるCO2排出量をLCA(Life Cycle Assessment)手法を用いて評価するとともに、船舶運航時のCO2排出リスクの評価をEEDIの考え方を参考に行った。さらに、これらの評価手法に基づいたライフサイクル便益評価の定式化を行い、リスクベースの構造最適化手法のフレームワークを提案した。また、最適化手法の検討については、遺伝的アルゴリズムによる多目的最適化(MOGA)プログラムの開発を行い、その有効性を検討した。本研究で取り扱った問題は、大変簡便な最適化問題ではあるが、今後このフレームワークに基づいたより実用的なリスク評価に基づく最適化への応用が期待できる。 本研究では第2に、破壊リスクの検討における不確定性の取扱い方法や、リスク評価手法の高度化について検討した。具体的には、腐食する鋼板を例として、不確定性を有する腐食形状をランダム場による表現方法を検討するとともに、それを用いた強度の不確定性評価手法について検討した。ランダム場の表現を用いることにより、十分腐食が進行した腐食鋼板に関しては、ランダム場により妥当な表現が可能であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
総合的なリスクを用いた最適化の概念と、多目的最適化等の手法の導入を行うことができた点で、研究は順調に進展していると言える。一方、当初予定していたプロダクトモデルを用いた最適設計フレームワークの導入については、プロダクトモデルの複雑さや大量なデータの必要性等から、直接最適設計のフレームワークへと適用することは困難であることがわかった。よって、本研究成果では、簡単な対象構造に関してパラメトリックな構造寸法の決定方法を導入することで対応した。以上の理由から、「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、総合的リスク評価の考え方とそれに基づいたライフサイクル構造最適化問題を検討することができた。今後はこの考え方を実用的な問題へと応用ための手法を検討することが課題である。具体的には、以下の項目を考えている。 (1)より実用的な問題が取り扱えるために最適化ツールの高度化 (2)より現実的かつ妥当なリスクの評価方法 具体的には(1)については、並列化遺伝的アルゴリズムの検討や多目的最適化手法の有効性の検討を検討している。また(2)については、前年度までに導入した(MAMRPOL条約の方法を用いた)油流出リスクの評価について、より妥当な評価手法とするために、衝突や座礁現象を考慮したリスク評価手法の検討を行う必要があると考えている。また、各種破壊リスクの検討においては、前年度に引き続き強度の不確定性の取扱い方法について検討し、破壊リスクの評価手法の高度化について検討する。
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Research Products
(5 results)