2012 Fiscal Year Annual Research Report
新素材シンチレーターを用いた散乱中性子計測器の開発
Project/Area Number |
23360413
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
畦地 宏 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 教授 (90135666)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猿倉 信彦 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 教授 (40260202)
中井 光男 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 教授 (70201663)
清水 俊彦 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センタ, 助教 (80415182)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 散乱中性子 / シンチレーター / 高速ADコンバーター装置 |
Research Abstract |
本研究の目的はレーザー核融合研究における散乱中性子計測器を開発し、計測原理実証を行う事である。さらにこの新計測器を用いて核融合燃料の面密度の測定を行い、レーザー核融合における最も重要な物理課題である高密度圧縮の研究に貢献する。計測器のアイディアとして近年著者らによって開発された新素材ガラスシンチレーター「APLF80+3Pr」を用いる事が提案されていた。また24年度の成果によって、シンチレーターをアレー構造にし、マルチアノード光電子増倍管に接続し、すべての信号をADコンバーターに接続すれば、散乱中性子は観測できる事が示された。その予備実験で散乱中性子と思われる信号の観測に至っている。 平成24年度の研究開発の概要 多チャンネルADコンバーターの開発をすすめ、全体の半分のチャンネルまで動作できるようになった。H25年度に完成する予定である。既存のTime to Digital Convertor装置(TDC)を流用して、散乱中性子計測の実験を試みた。核融合の実験は非常に大規模であり、マシンタイムは非常に限られていたが、その中で散乱中性子の計測を試みた。数ショットの球爆縮ショットが得られ、そのうち2ショットで散乱中性子の信号を観測する事が出来た。TDCでは一次中性子の信号に飽和が起り、正確な燃料ρRの評価にはいたらなかったが、ほとんど本研究目的が達成された事を意味するデータに成った。ADコンバーター装置が動けばこれらの信号が中性子である事が明らかになると考えられる。2013年度には散乱中性子計測のためのマシンタイムが確保されたため、より詳細な検証実験が可能になる。 国際協力の展開も進歩が有った。米国のレーザーを用いた核反応断面積計測へ本装置の性能が見込まれ、現地視察と実験への見学参加を行った。今後共同研究を始める。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の最終目標である散乱中性子の計測までこぎ着けた。現状は一次中性子の信号の影響が残っており、正確な燃料の面密度計測には至っていないが、後は核融合の実験を繰り返す事で、計測器としての信頼度を担保する事が出来ると考えられる。平成24年度からドイツStuck社から多チャンネル高速ADコンバーターシステムの調達と、阪大内での装置開発を続けており、平成25年度初頭にはすべての装置が完成する予定である。 またこの新素材シンチレーターを別の研究に応用する動きが始まっている。超高強度レーザーをもちいて重元素ターゲットに集光すると、電子が発生し、X線に変換され、最終的に中性子を発生させる。この中性子の空間密度は宇宙の超新星爆発にも匹敵する。この中性子を中性子源として超新星内の核反応をもぎした実験が計画され始めている。この実験の主力計測器としてこの散乱中性子計測器を応用した計測器の導入が期待されており、現在新たな装置の設計が進んでいる。米国の研究グループもこの方式に着目し始め、情報交換が始まっている。このように当初の目標達成を目前に控え、さらに次の応用展開も花開きだした。本研究の進捗は当初の計画以上に進展していると評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2013年の5月27日31日に散乱中性子計測のための高密度爆縮核融合実験が採択された。のべ8ショット程度では有るが、本研究のための最高の条件での核融合実験が行われる。この期間にすべての装置を完成させ、散乱中性子の計測が実現すると見込まれている。また2013年9月には阪大レーザー研としてのメインプロジェクトである高速点火核融合実験が行われる。この実験においても散乱中性子計測器が導入され、核融合燃料の密度計測が出来る物と考えられている。 研究成果の報告に関して、4月24日に横浜で中性子源と中性子計測に関する国際学会が開催され、散乱中性子計測器の開発と、核科学研究への応用について講演がなされた。今後英文論文が投稿される予定である。また9月にはレーザー核融合最大の国際学会IFSAが開催される。ここでも本研究に関する成果発表が行われ、論文が投稿される予定である。
|