2011 Fiscal Year Annual Research Report
三次元位置検出型ガンマ線マイクロカロリメータの開発
Project/Area Number |
23360422
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊豫本 直子 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40508173)
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Keywords | 放射線 / 超伝導材料・素子 / 低温物性 / X線 / 粒子線 |
Research Abstract |
マイクロカロリメータは放射線のエネルギーを温度変化として計測するエネルギー分散型の放射線検出器であり、従来のエネルギー分散型の放射線検出器に比べて1桁から2桁優れたエネルギー分解能の実現が原理的に可能である。本研究ではエネルギーが数百 keVから数 MeVのガンマ線用のマイクロカロリメータの開発を目指す。このエネルギー領域で十分なガンマ線検出効率を得るには鉛を放射線の吸収体とした場合でも数 mmの厚さが必要であるが、このような厚い吸収体の場合、厚みのどこでガンマ線が吸収されたかによって出力信号の波形が異なる位置依存性が避けられず、それによってエネルギー分解能が劣化してしまう。本研究では、吸収体内部での熱の伝わり方を考慮してガンマ線の吸収位置を計測する位置検出型のガンマ線マイクロカロリメータを開発することでこの劣化を防ぐ方針である。 平成23年度は、まずガンマ線入射時の吸収体内部での熱の伝わり方のシミュレーションを行い、結果を発表した。また、マイクロカロリメータの熱的パラメータと電気的パラメータの測定システムを構築した。今後、これらを利用して検出器の設計と性能評価を行う。さらに、既存のマイクロカロリメータにガンマ線用の鉛の吸収体を取り付けてガンマ線マイクロカロリメータの試作品を製作したが、この試作品を性能評価のために冷凍機に組み込んで冷却したところ、ガンマ線用の場合は機械式冷凍機からの振動が問題となることがわかった。そこで、冷凍機の改修などにより振動の対策を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガンマ線マイクロカロリメータの製作は(1)吸収体以外の部分の製作と(2)吸収体の取り付けの2つに分けられるが、(1)はX線マイクロカロリメータ用の製作技術を利用できるため、(2)が主な開発項目である。平成23年度の研究でマニピュレータを利用した吸収体の取り付け方法を確立した。 マイクロカロリメータを設計するには、熱的パラメータや電気的パラメータを測定してそれを元に新設計での性能を見積もる必要がある。平成23年度の研究で、マイクロカロリメータの熱的パラメータや電気的パラメータの測定システムを構築した。さらに、ガンマ線マイクロカロリメータの設計では吸収体内部での熱の伝わり方を見積もるためのシミュレータも必須であるが、平成23年度の研究でそのようなシミュレータを開発した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず試作品の性能評価を行い、その結果を元に1ピクセルのガンマ線マイクロカロリメータを設計して、マイクロマシンニングで製作する。次に1ピクセル検出器を冷却して性能評価して、その結果を元に2ピクセルのガンマ線マイクロカロリメータを設計、製作、性能評価する。必要に応じて、設計、製作、性能評価のサイクルを繰り返し、開発を進める。
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