2012 Fiscal Year Annual Research Report
三次元位置検出型ガンマ線マイクロカロリメータの開発
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23360422
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊豫本 直子 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40508173)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 放射線 / 超伝導材料・素子 / 低温物性 |
Research Abstract |
マイクロカロリメータは放射線を吸収体で吸収した際の温度変化を温度計で測定することで放射線のエネルギーを計測するエネルギー分散型の放射線検出器であり、従来のエネルギー分散型の放射線検出器に比べて1桁から2桁優れたエネルギー分解能の実現が原理的に可能である。本研究ではエネルギーが数百 keVから数 MeVのガンマ線用のマイクロカロリメータの開発を目指す。このエネルギー領域で十分なガンマ線検出効率を得るには鉛を放射線の吸収体とした場合でも数 mmの厚さが必要であるが、このような厚い吸収体の場合、厚みのどこでガンマ線が吸収されたかによって出力信号の波形が異なる位置依存性が避けられず、それによってエネルギー分解能が劣化してしまう。本研究では、吸収体内部での熱の伝わり方を考慮してガンマ線の吸収位置を計測する位置検出型のガンマ線マイクロカロリメータを開発することでこの劣化を防ぐ方針である。 平成24年度の研究では、製作したガンマ線マイクロカロリメータを機械式希釈冷凍機で冷却して、662 keVのガンマ線を照射して検出した。得られたガンマ線パルス信号を解析したところ、当初のマイクロカロリメータの設計ではパルス信号の減衰時定数が目標に比べて長いことがわかったため、再設計を行った。また、マイクロカロリメータの熱的パラメータと電気的パラメータの測定システムを改良するとともに、複数ピクセルを同時に読み出せるシステムを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガンマ線マイクロカロリメータの製作は(1)温度計など吸収体以外の部分の製作と(2)吸収体の取り付けの2つに分けられる。このうち(2)は平成23年度に研究を行っている。平成24年度は(1)の製作に使用するマイクロマシンニング装置に不具合があったが、すでに解決済である。さらに別の施設の同等のマイクロマシンニング装置の利用も開始するなど、今後不具合があった場合の対策も進めた。 マイクロカロリメータによる放射線検出には、極低温への冷却が必須である。ガンマ線用のマイクロカロリメータでは従来のX線用に比べて吸収体が大きいため、冷却に使用する機械式希釈冷凍機の振動によりマイクロカロリメータが破損するなどの問題があったが、振動対策を施して、冷却してガンマ線を検出できるようになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず1つの吸収体に1つの温度計を取り付けた1温度計1ピクセル素子を2個並べて2温度計2ピクセル素子を製作、冷却して、2ピクセル同時でのガンマ線検出を行う。次に1つの吸収体の両端に2つの温度計を取り付けた2温度計1ピクセル素子を設計、製作し、1温度1ピクセル素子と組み合わせて3温度計2ピクセル素子として冷却し、ガンマ線信号を取得して波形解析を行うことで位置検出を行う。その結果を元に、2温度計1ピクセル素子を複数並べた検出器を設計、製作し、冷却して、三次元位置検出型マイクロカロリメータの実証実験を行う。
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