2011 Fiscal Year Annual Research Report
燃料被覆管の表面酸化膜における水素移動のその場観察
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23360427
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高木 郁二 京都大学, 工学研究科, 教授 (20206717)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋吉 優史 京都大学, 工学研究科, 助教 (70378793)
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Keywords | 燃料被覆管 / 水素 / 軽水炉 / 拡散係数 / 酸化膜 / ジルコニウム / 核反応法 |
Research Abstract |
本研究の目的は、軽水炉燃料被覆管であるジルコニウム合金の表面に生成した酸化膜中の水素の移動速度を定量的に評価し、酸化膜の生成条件や照射損傷が移動速度に及ぼす影響を調べることによって、移動の機構を明らかにすることである。 1年目である今年度は、研究実施計画に従って水素の移動速度を定量的に評価した。先ず400℃の水蒸気中で試料をオートクレープ処理し、表面に1.6μm程度の厚みの酸化膜を生成させた。次にこの試料を300℃に保持し、片面を重水素プラズマに曝した状態で試料内部の重水素濃度分布が変化する様子を核反応法を用いてその場観察した。 その結果、重水素の移動が早い外側の層と移動が遅い内側の層が存在することが分かった。ナノラマン分光によって、外側の層は単斜晶、内側の層は正方晶であることは知られていたが、本研究によって水素の移動速度が著しく異なることが初めて分かった。この原因は酸化物が生成する際に体積膨張することによって発生する圧縮応力ではないかと考えられる。 定量的に移動速度を評価するため、一次元の拡散モデルを数値解析し、内側の層における重水素濃度分布を再現した。ジルカロイよりも鉄を多く含むZironの場合、300℃での重水素の拡散係数は1×10^<14>cm^2/sであり、文献値とあまり変わらない妥当な結果が得られた。しかしながら温度依存性は文献値よりも小さいことが分かった。 この他に、軽水で腐食した後に重水で腐食すると、比較的短時間で十分な量の重水素を吸蔵することが分かった。この結果を利用して、2年目以降ではイオン照射実験で用いる試料の作成を行う予定である。 以上のように、所定の性能の試料を作成し、同時観察法によって酸化膜中の重水素濃度分布を測定し、数値計算によって水素の拡散係数を定量的に評価する手法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に従って研究を遂行し、当初の目的を達成したため。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の研究が予定通り遂行できたため、2年目の研究も計画に従って進めていく。具体的には次の通りである。(1)LiOHを添加した水溶液や高温純水などで試料を作成し、酸化条件が重水素の移動速度に及ぼす影響を調べる。これにより、研究者によって水素の拡散係数が何桁も差がある理由を検討する。(2)イオン照射が重水素の移動速度に及ぼす影響を調べる。損傷を与えることが目的であるので、MeV前後のエネルギーのHやZrイオンを用いる。(3)加熱した試料に残留する重水素濃度の時間変化から拡散係数を評価する手法を開発する。既に開発したプラズマ照射法の結果と比較することにより、深いポテンシャルの有無を知ることが目的である。
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