2012 Fiscal Year Annual Research Report
原子力水化学のための非均質照射場の超高速反応ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
23360430
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
永石 隆二 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (00354895)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 懸濁溶液 / ゼオライト / ジルコニア / 純水 / 海水 / 表面構造 / ゼータ電位 / ガンマ線分解 |
Research Abstract |
反射分光装置のデザイン・開発の遅延でパルス電子線照射装置を用いた懸濁溶液中の高速反応の測定まで達しなかったため、固-液の懸濁溶液として、原発事故時の汚染水処理や被覆管溶融で注目されているゼオライト、ジルコニア等の固体酸化物が共存した水溶液を対象に、水蒸気吸着測定装置を用いた酸化物の表面構造評価や、ゼータ電位測定装置等を用いた懸濁液の化学状態分析を先行させるとともに、定常照射源であるCo-60ガンマ線照射装置を用いた放射線分解による水素発生等の生成物分析を進めた。 酸化物の表面構造評価では、ジルカロイ等の金属を酸化して作成したジルコニアは比表面積が小さく、表面上の吸着サイトでの化学吸着サイトの割合が少ない一方、アルミノケイ酸塩であるゼオライトは比表面積が大きく、化学吸着サイトの割合が多かった。また、懸濁液の化学状態の測定では、ジルコニアを純水または海水成分を含む水溶液に浸すと、弱酸性の酸性度を示し、ゼータ電位は負の値であるがほぼゼロに近い値を示した。一方、ゼオライトの場合はその種類や比表面積に依存するものの、水溶液は概ね中性からアルカリ性の酸性度を示し、ゼータ電位は負の値を示した。 上記酸化物が共存した水溶液中のガンマ線分解による水素発生では、どちらの酸化物でも発生する水素量が酸化物が共存しない場合に比べて多いため、放射線の酸化物へのエネルギー付与が水の分解に関与していることが示唆されるが、その水の放射線分解への関与が、純水と海水の場合で異なること(塩濃度依存性)、酸化物が水溶液に接する表面積に依存することと等の結果が得られた。以上の研究は、懸濁溶液中の高速反応の測定にあたって観測する対象や条件を選定する上で意義ある基礎データであるとともに、原子力施設での平常時や事故時の原子炉、並びに固体吸着材による放射性物質の除去・回収での水素安全評価にとっても重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
懸濁溶液中の高速反応の測定に用いる線形加速器-分光装置システムに導入する反射分光装置のデザイン及び開発に大幅な遅延が生じたため、24年度内の反射分光装置の設置及び試験の着手が困難となり、計画を延期する必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
反射分光装置のデザイン及び開発がほぼ完了し装置の試作を製作したので、線形加速器-分光装置システムに設置し、これを用いた固-液の懸濁溶液中の過渡分光測定に着手して速やかに動作確認、改良等を実施する。マシンタイム、故障、メンテナンス等で線形加速器を利用しない/できない期間は、上記「研究実績の概要」と同様に、懸濁溶液の化学状態分析や調製法確立を実施するとともに、高速反応での観測対象や条件を選定するために、懸濁溶液の定常照射による生成物分析を実施する。
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