2011 Fiscal Year Annual Research Report
個体群生態学と繁殖生態学の融合による植物の生活史研究の包括的展開
Project/Area Number |
23370006
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大原 雅 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 教授 (90194274)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高田 壮則 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 教授 (80206755)
北村 系子 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (00343814)
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Keywords | 個体群 / モニタリング / フェノロジー / 開放花 / 閉鎖花 / 遺伝的分化 / 絶滅確率 |
Research Abstract |
本研究の初年度は、当初の予定通り「野外調査」、「遺伝解析」、「数理解析」の3つの研究アプローチより、研究を行った。 「野外調査」に関しては、これまで継続して個体のモニタリング調査を行ってきた林床植物11種に加え、新たに「オオバキスミレ」を対象種とし、個体群動態に関する調査を開始した。「オオバキスミレ」に関しては、まだ基本的な繁殖特性が明らかにされていないことから、複数の個体群で開花フェノロジー、結果率、結実率などの比較調査を行った。その結果、オオバキスミレには閉鎖花のみを形成する個体群と閉鎖花と閉鎖花の2タイプの花を形成する個体群が存在することが明らかになった。また、開放花のみを付ける個体群と、開放花と閉鎖花の両方を付ける個体群の開放花の結実率を比較したところ、閉鎖花をつける個体群の結実率がより高い傾向が認められた。 「遺伝解析」に関しては、一回繁殖型のオオウバユリ個体群の遺伝的分化に関する研究を展開した。北海道内23集団を対象に調査・解析を行ったところ、道南の集団は、個体サイズが小さいが遺伝的多様性が高く、一方、道東の集団は、個体サイズが大きいが遺伝的多様性が低いことが明らかになった。また、オオバナノエンレイソウに関しては、より孤立化した小さな個体群で、開花→種子→実生と生育段階の移行にともなう遺伝的多様性の低下がより顕著になることが明らかになった。 「数理解析」に関しては、これまで10年以上のモニタリングデータセットがある6種に関して、繁殖率、死亡率、種子繁殖依存率、栄養繁殖依存率をパラメーターに個体群の絶滅確率推定のための数理モデルを作成し、さまざまなパラメーター依存性について解析を行った。その結果、同種内でも個体群サイズの違いにより、繁殖率と死亡率のパラメーターに大きな差異が存在すること、また、同じ個体群においても、年変動が存在することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、多くの林床植物に関して事前に長期モニタリングデータを蓄積していることから、さらなる野外調査に加え、遺伝解析と数理解析への研究の移行がスムーズに行えているため。
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Strategy for Future Research Activity |
現状では特に変更、改善する点はなく、24年度に関しても「野外調査」、「遺伝解析」、「数理解析」の3つの柱により研究を推進していく予定である。
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Research Products
(4 results)