2013 Fiscal Year Annual Research Report
海洋生態系を支えるシアノバクテリアの多様化と光合成適応
Project/Area Number |
23370013
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
村上 明男 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 准教授 (50304134)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
広瀬 裕一 琉球大学, 理学部, 教授 (30241772)
秋本 誠志 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 准教授 (40250477)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光合成 / 光環境 / 海洋生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
地球の生命進化の初期段階で光合成酸素発生能(水分子分解能)を獲得し、現代まで唯一の酸素供給者として地球生態系の基盤を作り、水圏、特に海洋の主要一次生産者でもあるシアノバクテリアは、以前は単純な光合成色素組成をもつとされていた。しかし、近年の研究からクロロフィル、カロテノイド、フィコビリンそれぞれの光合成色素に、多くのバリエーションが存在することが相次いで見いだされ、シアノバクテリアの多様性は非常に高いことが明らかになってきた。また、シアノバクテリアの生活様式も様々で、プランクトン性・浮遊性の一般的な生活様式に加え、海藻や無生物への付着性・穿孔性の生活様式、無脊椎動物や植物との共生性の生活様式、なども知られている。さらに、外洋のプランクトン性シアノバクテリアの中には、有光層下部の光補償点深度限界領域付近(水深150-200m、光合成有効放射強度は海面上の0.1~1%)に生育するシアノバクテリアも知られ、これらは特殊な光合成色素組成を有し、この水深の光環境に適応することで光合成生物の優占種となっている。本研究では、これらの多様なシアノバクテリアの光合成色素を中心とした光合成系が、様々な環境要因に対してどのように適応しているのかの仕組みを解明することを目的として、新たな株の分離培養と株の特性に合わせた培養方法の確立、共生・付着の形態観察、光エネルギー捕集系の分光測定、などの解析を進めている。本年度は、赤色のフィコビリン(フィコエリスロビリンとフィコウロビリン含量の異なるタイプ)を豊富にもつシアノバクテリア株やクロロフィルb2含量が大きく異なるシアノバクテリア株などについて、その励起エネルギー移動を測定し、現在解析を進めている。また、外洋貧栄養海域での栄養塩環境に適応したシアノバクテリアの栄養塩取り込み調節機構に関する新たな知見も得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多様な水圏環境(水深、光強度、スペクトル分布、各種の栄養塩濃度など)に生育し、また異なる生活様式(付着、共生、プランクトン性)をもつシアノバクテリア株ほぼ全てについて、実験室レベルでの人工培養法が構築できている。また、これらの株のそれぞれの生理特性などにあわせた光合成活性測定装置や分光分析装置の改良・開発もほぼ完成しており、今後の研究の大きな進展が可能となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
外洋の貧栄養海域の中層付近に生育するプランクトン性シアノバクテリアについて、実験室培養の規模の拡張や培養条件の最適化により、大量の細胞サンプルを確保できるようにする。 色素組成に変異が見られる付着性シアノバクテリアの新規株を確立し、分光測定や光合成活性の測定を行う。 培養した光合成活性および光合成色素系の各種分光測定を行う。 色素タンパク質複合体の分離と各バンドに含まれるペプチドと色素の分析を行う。
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