2011 Fiscal Year Annual Research Report
花粉の表層構造エキシンおよびポレンコートの形成機構と受粉過程における機能の解析
Project/Area Number |
23370018
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Field |
Plant molecular biology/Plant physiology
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
石黒 澄衛 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (50260039)
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Keywords | シロイヌナズナ / 花粉 / エキシン / ポレンコート / タペート細胞 / 細胞壁 / アラビノガラクタンタンパク質 |
Research Abstract |
花粉の表面はエキシンと呼ばれる硬い殻で覆われている。エキシンの構造は極めて多彩であるが、植物種ごとに固有である。このことは、エキシンの構造の構築が遺伝子の制御下で行われていることを意味する。では、どのような遺伝子が働いているのだろうか。 シロイヌナズナの花粉は網目状のエキシンを持つ。この網目構造が正常に形成されない突然変異体kaonashiを多数同定し、その原因遺伝子の同定と遺伝子産物の機能解析を進めた。本年度はkaonashi4 (kns4) のおよびkns6を中心に研究を進めた。これらの原因遺伝子を同定した結果、いずれも細胞壁多糖の生合成に関わる糖転移酵素をコードする遺伝子であった。kns4については花粉形成の初期にアラビノガラクタンタンパク質(AGP)の蓄積量が著しく減少していたことから、KNS4はAGPの生合成酵素であると推定された。同時に、AGPがエキシン形成に重要な役割を持っていることが明らかになった。 エキシンの網目の内部には、ポレンコートと呼ばれる粘着性の物質が詰まっている。ポレンコートは送粉者への接着、乾燥からの保護、柱頭が同種花粉として認識するための識別分子の保持、柱頭上での吸水の促進など幅広い機能を持つと考えられている。本年度はこの形成機構について解析を進めた。ポレンコートの原料は花粉を取り囲むタペート細胞で生合成され、タペート細胞内にはこれらの物質を一時的に蓄積する特殊なオルガネラ、タペートソームおよびエライオプラストが発達する。シロイヌナズナとセイヨウナタネ用い、両オルガネラの形成過程をGFPを用いた方法でライブイメージングすることに成功した。ポレンコート形成時にはタペート細胞がプロトプラスト化し、葯室内に潜り込んでいく様子も観察された。さらに、シロイヌナズナのポレンコートの主要タンパク質であるEXLがタペート細胞内に蓄積する様子も明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エキシン形成に異常を示すkaonashi突然変異体の原因遺伝子の同定が順調に進んでおり、また、ポレンコートの形成機構の解析も進んでいる。初年度としては十分な成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
高速シーケンサが利用できるようになり、kaonashi変異の原因遺伝子の同定は当初計画よりも早く進みそうである。よって、同定された遺伝子の機能解析を集中的に進めていくことにしたい。
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